日本独特の風景のひとつに「温泉街」がありますよね。湯けむりが立ち上る街並み、旅館の明かり、浴衣姿で歩く人々。そんな「温泉街」を英語で表すとき、実はぴったりの一語はありません。状況に合わせていくつかの表現を使い分けます。
いちばん近い言い方は「hot spring town」または「spa town」です。「hot spring」は文字通り「温泉」、「town」は「町」。そのまま「温泉の町」という意味になります。たとえば「Kusatsu is a famous hot spring town in Japan(草津は日本で有名な温泉街です)」というように使えます。
「spa town」はヨーロッパでよく使われる表現で、温泉や鉱泉のある保養地を指します。英語の「spa」はもともとベルギーのスパという町の名前に由来していて、「温泉療養地」という意味で世界中に広まりました。したがって、「spa town」には少し上品で落ち着いた響きがあります。
もう少し観光地らしさを出したい場合は、「hot spring resort」や「spa resort」と言うこともあります。「resort」は「リゾート地」、つまり滞在型の観光地を指す言葉です。「Hakone is a popular hot spring resort near Tokyo(箱根は東京近くの人気温泉地です)」のように言えば、外国の人にもイメージが伝わりやすいでしょう。
面白いのは、英語には日本のような「温泉街」という文化的まとまりの概念があまりないことです。日本の温泉街は、温泉だけでなく、旅館、土産物屋、共同浴場、そして夜の静けさまで含めてひとつの体験になっています。そのため英語で説明するときは、「a traditional hot spring town with inns and public baths(旅館や共同浴場のある伝統的な温泉街)」のように少し説明を添えるのも自然です。
「温泉街」という言葉には、単なる観光地以上に、ゆったりとした時間の流れや人とのつながりが感じられます。英語にするときも、そうした情緒を一緒に伝えられるといいですね。
