英語で「夕方」を表現する際、最も身近な単語は「evening」ですが、その時間帯の捉え方や、刻一刻と変化する空の様子を表す言葉には、英語圏特有の情緒と習慣が反映されています。
まず気になるのが、「afternoon(午後)」と「evening」の境界線です。一般的に「afternoon」は正午から午後5時か6時頃まで、それ以降、寝るまでの時間が「evening」とされます。面白いのは挨拶の使い分けで、午後5時を過ぎて人と会うときは「Good evening(こんばんは)」と言いますが、別れ際には「Good night(おやすみなさい)」が使われます。たとえ夜の早い時間でも、別れの挨拶に「Good evening」は使わないのが自然なルールです。
日が沈む前後のわずかな時間は、単なる「夕方」を超えた豊かな表現が揃っています。太陽が地平線に沈む瞬間は「sunset」、日が沈んだ後の薄暗い状態は「dusk」や「twilight」と呼ばれます。「twilight」の語源は「twi(2つの)」と「light(光)」が合わさったもので、昼の光と夜の闇が混じり合う「二つの光の間」を意味します。神秘的な響きがあるため、映画や小説のタイトルにもよく使われますね。
また、写真や映画の世界では、夕方の光の状態を「golden hour(ゴールデンアワー)」と呼びます。太陽が低くなり、すべてが黄金色に輝く絶好の撮影チャンスを指します。対照的に、日が沈んだ直後の空が深い青に染まる時間は「blue hour(ブルーアワー)」と呼ばれ、どちらも日常の中で魔法のような瞬間として親しまれています。
「夕方」を人生に例えた慣用句もあります。「the evening of one’s life」は、直訳すれば「人生の夕方」ですが、これは「人生の晩年」を意味します。若さを「朝」に、働き盛りの時期を「昼」に見立て、穏やかに落ち着いていく時期を「夕方」と表現するのは、日本語とも共通する詩的な感覚です。
イギリスなどの天気に関する言い伝えには、「Red sky at night, shepherd’s delight」というものがあります。「夕焼けが赤ければ、羊飼いは喜ぶ」という意味で、翌日が晴天になることを示す観天望気(自然現象から天気を予測すること)の一つです。古くから、夕方の空の色は翌日の活動を左右する重要なサインだったことが伺えます。
このように、英語における「夕方」は、単なる一日の終わりの時間帯ではなく、光の移ろいや人生の節目、さらには自然との対話を感じさせる豊かな表現に満ちています。空の色が変わるのを楽しむように、言葉のニュアンスの違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
