英語で「猫」は「cat」ですが、多くの慣用句やスラングに登場しています。
まず、呼び方のバリエーションを見てみましょう。子猫は「kitten」ですが、大人のオス猫は「tomcat」と呼ばれます。これは18世紀の物語に登場した「Tom the Cat」というキャラクターが由来とされています。また、しま模様の猫は「tabby」と呼ばれますが、これはかつてバグダッドのアル=アッタビーヤ地区で作られていた波紋模様の絹織物の名前に由来しています。
猫にまつわる最も有名な慣用句の一つに「let the cat out of the bag」があります。これは「うっかり秘密を漏らす」という意味ですが、その由来は中世の市場に遡ります。当時、高価な子豚を買ったつもりが、袋の中身を安価な猫にすり替えられて騙されるという詐欺がありました。家に帰って袋を開け、猫が飛び出した時に初めて騙されたことに気づく……そんな歴史的な背景から生まれた言葉です。
また、猫の驚異的な身体能力や生命力は「A cat has nine lives.(猫には9つの命がある)」という言い伝えを生みました。どれほど高い場所から落ちても、あるいは危機に瀕しても生き延びる姿から「猫はなかなか死なない(しぶとい)」という象徴になったのです。これに関連して、好奇心が強すぎて災いを受けることを「Curiosity killed the cat.(好奇心が猫を殺す)」と表現し、余計な詮索を戒める教訓として使われます。
社会的な文脈では、「fat cat」というユニークな表現があります。直訳は「太った猫」ですが、実際には「私利私欲に走る金持ち」や「特権を利用して私腹を肥やす政治家」などを指す皮肉な言葉です。1920年代のアメリカで、政治献金を多く行う有力者を指して使われ始めたのがきっかけとされています。
一方で、素晴らしいものや人を称賛する際に「the cat’s pajamas(猫のパジャマ)」という風変わりなスラングが使われることもあります。1920年代に流行した言葉で、当時はクールでファッショナブルな人を指していました。
このように、英語の「猫」は、可愛らしさだけでなく、ずる賢さ、しぶとさ、そして時には富の象徴として、実に多種多様な意味を背負っています。言葉の裏側にある「猫の姿」を想像してみると、英語のニュアンスがより立体的に見えてくるのではないでしょうか。
