英語で「勇気」を表す際、最も一般的な単語は「courage」ですが、その語源や類義語との違い、さらには歴史が生んだ独特な慣用句を紐解くと、英語圏における「心の強さ」の捉え方が見えてきます。
「courage」という言葉の語源は、ラテン語で「心」を意味する「cor」にあります。フランス語の「coeur(心)」を経て英語に伝わりました。かつての「勇気」は、単に危険に立ち向かうことではなく、「自分の心にあることを包み隠さず話す」という意味で使われていたと言われています。つまり、外側への強さだけでなく、内面の誠実さも含まれていたわけです。
よく似た言葉に「bravery」がありますが、これらは微妙にニュアンスが異なります。「bravery」は、天性のアグレッシブさや、恐怖を感じさせない外向的な勇敢さを指すことが多いです。一方で「courage」は、恐怖を感じながらも、信念や目的のためにそれに打ち勝とうとする「心の意志」に重点が置かれます。このほか、戦場での英雄的な勇気は「valor」、困難に耐え抜く不屈の精神は「grit」と表現されるなど、英語では勇気の種類によって言葉が厳密に使い分けられています。
「勇気」にまつわる面白い、あるいは少し皮肉な慣用句も存在します。例えば「Dutch courage(オランダ人の勇気)」という表現です。これは「酒の勢いで出す勇気(酒乱)」を意味します。17世紀、イギリスとオランダが対立していた時代に、イギリス人が「オランダ人は酒を飲まないと戦えない」と揶揄したことが由来とされる、歴史的な背景を持つ言葉です。
また、勇気を奮い立たせることを「pluck up the courage」と言います。「pluck」は「(羽などを)むしり取る」や「(楽器の弦を)つま弾く」という意味ですが、かつては内臓(特に心臓や肝臓)が勇気の源だと信じられており、それらを引き上げるというイメージからこの表現が生まれました。
文法的な側面では、「勇気を出す」と言いたい時に「take courage」や「have the courage to ~」といった形がよく使われます。単なる感情ではなく、自分の意志で「手に取るもの(take)」や「所有するもの(have)」として扱われているのが興味深いポイントです。
このように、英語の「勇気」は「心(heart)」と深く結びついており、歴史や文化の中でその定義が磨かれてきました。単に恐れないことではなく、自分の心に正直であること。言葉のルーツを知ることで、その真の意味がより鮮明に伝わってくるのではないでしょうか。
