夜空に輝く「北斗七星」。英語ではどのように表現されるのでしょうか。実は、北斗七星は英語圏の国によって呼び名が大きく異なり、それぞれの文化や生活習慣が色濃く反映されています。
アメリカで最も一般的な呼び名は「the Big Dipper」です。「dipper」とは、水を汲むための「柄杓(ひしゃく)」を意味します。あの独特な7つの星の並びを、大きな柄杓に見立てた非常に直感的な呼び名です。一方、イギリスでは「the Plough(プラウ)」と呼ばれるのが一般的です。これは「農耕用の鋤(すき)」を意味しており、農耕文化が根付いていた歴史を感じさせます。同じ星の並びでも、地域によって連想する道具が異なるのは面白いポイントですね。
北斗七星は、歴史的な転換点においても重要な役割を果たしてきました。19世紀アメリカの奴隷解放運動において、北斗七星は「the Drinking Gourd(水飲みひょうたん)」という隠語で呼ばれていました。逃亡する人々は、この「ひょうたん」の指し示す方向、つまり真北にある北極星を目指して自由な地へと進んだのです。当時の黒人霊歌には、逃亡のルートを教える暗号としてこの言葉が組み込まれていました。
天文学的な分類では、北斗七星は単独の星座ではなく、大きな星座の一部である「星群(asterism)」と見なされます。その本体は「Ursa Major(おおぐま座)」であり、北斗七星は「大きな熊」の背中から尻尾の部分にあたります。また、古い英語では「Charles’s Wain(チャールズの車)」と呼ばれることもあります。この「Wain」は「荷車」を意味し、古くから人々がこの星々を運び屋の車に見立てていたことが分かります。
実用的な雑学として、北斗七星の端にある2つの星は「The Pointers」と呼ばれます。この2つの星を結んで5倍ほど延ばすと、正確に「the North Star(北極星)」に突き当たるため、方位を知るための重要な指針(ポインター)として重宝されてきました。
文法的な特徴としては、これら特定の星の集まりを指す場合、必ず定冠詞の「the」を伴います。「the Big Dipper」や「the Plough」といった具合です。夜空に無数にある星の中で、特定の形として認識されている特別な存在であることを示しています。
このように、北斗七星の英語表現には、農具、生活道具、そして自由への道標といった多様なイメージが込められています。単なる星の並びとしてだけでなく、当時の人々の暮らしや願いが込められた名前だと思うと、夜空を見上げる楽しみがより一層深まるのではないでしょうか。
