英語で「映画」を表現する際、最も身近な単語は「movie」ですが、実は地域や文脈によって「film」や「cinema」など様々な言葉が使い分けられています。これらの言葉の由来を辿ると、映画という技術の進化の歴史が見えてきます。
まず、アメリカ英語で最も一般的な「movie」は、1910年代に生まれた言葉です。もともとは「moving picture(動く写真)」という表現を短縮した俗語でした。静止画が動くという、当時の人々にとっての驚きがそのまま名前に反映されているのです。一方、イギリス英語では「film」が好まれます。これは、撮影に使われる「フィルム(感光膜)」そのものを指す言葉で、アメリカでも芸術性の高い作品や業界全体を指す際によく使われます。
「cinema(シネマ)」という言葉は、フランス語の「cinématographe(シネマトグラフ)」に由来し、さらに遡るとギリシャ語で「動き」を意味する「kinema」に辿り着きます。現在では主に「映画館」という場所や、学問としての「映画学」を指す際に使われる、少しフォーマルな響きを持つ単語です。
映画にまつわる独特な呼び名として「the silver screen(銀幕)」があります。これは古い映画ファンの間だけでなく、現代でもニュースなどで使われる表現です。その由来は、初期の映画用スクリーンに実際に「銀(シルバー)」の粒子がコーティングされていたことにあります。光をより強く反射させ、映像を明るく見せるための工夫が、そのまま映画界を象徴する言葉として残っているのです。
また、興行成績を意味する「box office(ボックスオフィス)」という言葉にも面白い由来があります。これには諸説ありますが、かつての劇場で、入り口に置かれた小さな「箱(box)」のような形のチケット売り場で入場料を回収していたことから、その売り上げ自体を指すようになったと言われています。
日常会話で使われるユニークな俗語に「flick」があります。これは「(光などが)パチパチまばたく」という意味ですが、初期の映写機の性能が低く、映像が激しくチラついて見えたことから、映画のことをこう呼ぶようになりました。今では「chick flick(女性向けの恋愛映画)」といった表現の中にその名残を見ることができます。
文法的な特徴としては、映画館に行くことを「go to the movies」と複数形で表現する習慣があります。これは、かつての映画館が複数の短編作品を同時上映していた時代の名残であるという説や、映画館という場所には常に複数のフィルム(作品)が存在するからだという説があります。
このように、英語の「映画」にまつわる言葉には、技術の進歩や観客の驚き、そして劇場の熱気が刻まれています。単なる娯楽としてだけでなく、言葉の背景を知ることで、スクリーンに映る世界がより味わい深く感じられるのではないでしょうか。
