日本語の「食べ歩き」には、「歩きながら食べる」という動作と、「いろいろな店を巡って食べる」というレジャーの2つの意味があります。英語ではこのニュアンスの違いによって、全く異なる表現を使い分ける必要があります。
観光地などで複数の店をハシゴして楽しむ「食べ歩き」に最も近い英語は、「food crawl」です。これは「這う(crawl)」という単語が使われていますが、元々は次々と飲み屋を回る「pub crawl(はしご酒)」から派生した言葉です。「酔っ払って這ってでも次の店に行く」というユーモラスな語源を持っていますが、現在では「cafe crawl」や「dessert crawl」のように、特定のテーマで店を巡る楽しいイベントとして定着しています。
一方で、文字通り「歩きながら食べる」動作を指す場合は、「eating while walking」や「eating on the go」と表現します。「on the go」は「活動中」「あちこち動き回って」という意味で、忙しい現代人が移動の合間に食事を済ませるニュアンスが含まれます。
ここに文化的な違いも垣間見えます。日本では「歩き食べ」は行儀が悪いとされることもありますが、欧米、特にニューヨークやロンドンなどの大都市では、サンドイッチやコーヒーを片手に歩く姿は「効率的」であり、日常的な光景です。そのため、「食べ歩き」という言葉が持つ情緒的な響きは、英語圏では「street food(屋台料理)」という文化として認識されることが多いです。
また、軽く何かを食べる際によく使われる慣用句に「grab a bite」があります。「Bite(ひとかじり)」を「Grab(掴む)」、つまり「サッと食事をする」という意味です。「Let’s grab a bite to eat.(軽く何か食べに行こう)」というフレーズは、ネイティブの日常会話で頻繁に登場します。
少し変わった表現では、「grazing」という言葉もあります。本来は家畜が草を食む(はむ)ことを指しますが、人間が一日を通して少しずつ間食を繰り返すスタイルを指して使われることがあります。
文法的な注意点として、「食べ歩き」を直訳して「I enjoyed eating walking.」としてしまうと不自然です。「I enjoyed a food tour.」や「I walked around eating street food.」のように、具体的な状況を説明する形にするのが自然な英語です。
このように、「食べ歩き」を英語にする過程では、単なる動作の翻訳だけでなく、「楽しむための食事」なのか「忙しい合間の食事」なのかという、背景にある意図や文化を考える面白さがあります。
