英語で「疲れた」と伝える際、教科書で習う「tired」が最も一般的ですが、疲れの度合いや原因、さらには地域によるスラングの違いを知ると、自分の状態をより的確に、そしてユーモラスに表現できるようになります。
まず、疲れのレベルによる使い分けです。日常的な疲れは「tired」ですが、エネルギーを使い果たして動けないような状態は「exhausted」と表現します。「Exhaust」の語源はラテン語の「水を汲み出す」という意味にあり、体内のエネルギーというタンクが空っぽになった状態をイメージさせます。さらに、心身ともにすり減ったような疲れには、使い古した服などを意味する言葉から派生した「worn out」が使われます。
イギリス英語には、独特なスラングとして「knackered」という表現があります。「I’m knackered.(もうヘトヘトだ)」のように使いますが、この言葉の背景には少し悲しい歴史があります。もともと「knacker」とは、役目を終えた老馬を買い取って処分する業者のことでした。そこから「馬が処分されるほど働き詰めで疲れ切った」という意味に転じたのです。かなりくだけた表現ですが、労働の過酷さが滲み出ています。
また、働きすぎを表現する有名な慣用句に「burn the candle at both ends」があります。直訳すると「ロウソクの両端に火をつける」ですが、これは「朝早くから夜遅くまで休まず働く」ことを意味します。昔、貴重だったロウソクを両側から燃やすほど浪費して無理をする、という生活の様子から生まれた言葉です。
一方、アメリカのカジュアルな会話では「I’m beat」という表現もよく聞かれます。「打ちのめされた」という意味から転じて、誰かにボコボコにされたかのように体が重い、というニュアンスで使われます。また、燃料切れを意味する「running on fumes(ガソリンの気化ガスだけで走っている=余力だけで動いている)」という表現も、忙しい現代人らしい言い回しと言えるでしょう。
文法的な注意点として、よくある間違いに「I am tiring」と言ってしまうケースがあります。これは「私=退屈な(疲れさせる)人間だ」という意味になってしまいます。自分が疲れを感じている場合は「受動態」的な意味合いを持つ過去分詞の「tired」を使い、仕事などが「疲れさせる」ものである場合は現在分詞の「tiring」を使う、というルールは基本ですが非常に重要です。
このように、英語の「疲れた」には、単なる身体的な疲労だけでなく、ガソリン切れの車やロウソク、老馬といった様々な比喩が隠されています。その日の疲れ具合に合わせて言葉を選んでみると、相手にもその大変さがより伝わるかもしれません。
