日本の食堂やレストランでおなじみの「定食」。英語で表現するなら「set meal」が一般的ですが、実は欧米と日本の食文化の違いから、シーンによって使われる言葉が大きく変わる興味深いテーマです。
まず、日本の「定食」に最も近い表現は「set meal」や「set menu」です。これはメインのおかずにサイドメニューが決まった形で提供されるものを指します。一方、アメリカのファストフード店などで「ハンバーガーとポテト、ドリンクの定食(セット)」を注文する際は、「combo(コンボ:combinationの略)」と呼ぶのが一般的です。日本人がよく使う「セット(set)をください」という直訳では通じにくいので注意が必要です。
また、レストランのお昼時によくある「日替わり定食」や「ランチ定食」は、「lunch special」や「today’s special」と表現されます。「special」には「特別メニュー」や「本日のお得な料理」という意味が含まれており、日本の定食が持つお得なニュアンスにぴったりです。さらに、イギリスのスーパーでは「meal deal」という言葉も日常的に使われます。これはサンドイッチにスナックと飲み物を組み合わせた割引セットのことで、現代のイギリス人にとっての「定番の昼定食」と言えるかもしれません。
そもそも、なぜ「定食」に完全に一致する単語が少ないのでしょうか。それは欧米の伝統的な食文化が、前菜からメイン、デザートへと順番に出される「コース形式」を基本としているからです。ご飯、汁物、おかずが「一つのお盆に乗って同時に提供される」というスタイルは、独自の発展を遂げた日本的な文化なのです。そのため、近年の和食ブームの影響もあり、海外の日本食レストランではそのまま「Teishoku」とローマ字で表記されることも増えてきました。
定食が持つ「バランスの取れたしっかりした食事」というニュアンスを伝えたい時にぴったりな英語の表現に「a square meal」があります。直訳すると「四角い食事」ですが、これは「栄養バランスの取れた十分な食事」を意味します。かつてイギリスやアメリカの海軍で、揺れる船の上でもお皿が動かないよう、四角い木製のトレイで食事を提供していたことが語源だと言われています。日本のお盆も四角いことが多いので、どこか親和性を感じますね。
注文する際の文法としては、「I’ll have the lunch special.(ランチ定食にします)」のように、特定のメニューを指す定冠詞「the」を伴って使われるのが基本です。
このように、身近な「定食」という言葉を英語に翻訳しようとするだけで、食文化の違いや歴史の背景が見えてきます。「Teishoku」が世界共通語になる日も、そう遠くないかもしれませんね。
