英語で自分自身を表す「I」。アルファベットの「i」でありながら、単語として使われるときは文の途中であっても必ず大文字になります。たった1文字のこの言葉には、英語の歴史や面白い雑学が詰まっています。
「私」を意味する「I」が常に大文字で書かれるのには、かつての実用的な理由が関係しています。中世のヨーロッパでは、文章はすべて手書きで記録されていました。当時の小文字の「i」はただの短い縦棒のように書かれていたため、単語として1文字だけで書かれると、前後の文字と紛れてしまったり、ゴミや汚れと見間違えられたりして非常に読みにくかったのです。そこで、独立した単語としてしっかり目立たせ、読み間違いを防ぐために、あえて大きく「I」と書く習慣が定着したと言われています。
また、小文字の「i」の上にある「点」の名前をご存知でしょうか?これは「tittle(ティトル)」と呼ばれています。ラテン語で「小さなもの」を意味する言葉が語源です。これも手書き時代の名残で、11世紀ごろに「i」が隣の「u」や「m」の縦線と混ざって判読しづらくなるのを防ぐために、目印としてわざわざ点が打たれるようになったのが始まりです。
このティトルにまつわる有名な慣用句に「dot the i’s and cross the t’s」があります。直訳すると「iに点を打ち、tに横線を引く」となりますが、ここから転じて「細部まで注意を払う」「仕上げを完璧にする」という意味で日常会話やビジネスシーンでよく使われます。最後にしっかりと点や線を書き入れる、丁寧な作業の様子が目に浮かぶ表現ですね。
現代では、「iPhone」や「iPad」のように、製品名の頭文字としての小文字の「i」もすっかりおなじみです。1998年にApple社がiMacを発表した際、この「i」には「Internet(インターネット)」だけでなく、「individual(個人の)」「instruct(教える)」「inform(知らせる)」「inspire(ひらめきを与える)」といった複数の意味が込められていると説明されました。
たった1文字の「i」ですが、中世の手書き時代の苦労から現代の最先端テクノロジーまで、様々な時代背景を映し出しています。いつも何気なく書いている文字の成り立ちを知ることで、英語の世界がさらに面白く感じられるのではないでしょうか。
