英語学習における大きな壁の一つ「リスニング」。日本語では意識して耳を傾けることも、自然と耳に入ってくることも一括りに「聞く」と表現することが多いですが、英語では明確に使い分けられており、そこには言葉の面白い背景が隠されています。
最も基本的な違いは「hear」と「listen」です。「hear」は、物理的に音を感知する状態を指します。鳥の鳴き声や周囲の騒がしさなど、意識しなくても耳に飛び込んでくる音です。一方の「listen」は、意識を向けて主体的に耳を傾ける行為を指します。つまり「hear」が単なる耳の機能であるのに対し、「listen」は心や脳の働きを伴う積極的なアクションと言えます。
この「listen」という単語には、非常に興味深いアナグラム(文字の並べ替え)が隠されています。「listen」を構成する6つのアルファベットを並べ替えると、「silent(静かな)」という単語になります。「真に相手の言葉をリスニングするには、まず自分が静かにならなければならない」という教訓めいた偶然の一致は、英語圏でも度々話題に上ります。
また「耳(ear)」を使った面白い慣用句に「play it by ear」があります。直訳すると「耳で演奏する」となりますが、楽譜を見ずに耳で聞いた音を頼りに楽器を弾く(耳コピする)ことから転じて、「その場の状況に合わせて臨機応変に対応する」という意味で日常会話やビジネスシーンでも頻繁に使われます。対照的に、せっかくの忠告や提案が全く相手に届かず無視されてしまう状態は「fall on deaf ears(聞こえない耳に落ちる=馬耳東風)」と表現されます。
文法的な特徴として、「listen」の後に目的語(聞く対象)を置く場合は、必ず「listen to ~」と前置詞を伴います。これは「listen」が自動詞であり、「to」を使って「意識を向ける矢印の方向」を指し示す必要があるからです。一方、「hear」は他動詞として機能するため、前置詞なしで直接目的語をとることができます(例:I hear you)。
このように、英語におけるリスニング(聞くこと)は、単に音の波を拾う作業ではなく、相手にしっかりと意識の矢印を向ける態度を意味しています。「listen」の中に隠された「silent」の精神を思い出しながら英語の音声に耳を傾けてみると、普段の学習が少し違った視点で楽しめるかもしれません。
