英語で「庭」を表現するとき、真っ先に思い浮かぶのは「garden」でしょう。しかし、アメリカとイギリスではこの言葉のニュアンスが異なり、さらに「yard」という言葉との使い分けには、英語圏の人々の土地に対する考え方が反映されています。
まず「garden」という単語の語源ですが、これは古期フランス語やゲルマン語に由来し、「囲い」という言葉から来ています。つまり、もともとは「壁や柵で囲まれた特別な場所」を指していました。興味深いことに、同じ「囲い」という語源を持つ言葉には「yard」や「court(中庭)」、さらには「guarded(守られた)」などがあります。つまり庭とは、外の世界から守られた自分だけのプライベートな空間を意味していたのです。
現代の英語における最大の違いは、アメリカとイギリスの使い分けです。イギリスでは、家の周りにある植物が植えられたスペースや芝生の広場を総称して「garden」と呼びます。一方、アメリカでは、芝生や土のスペースは一般的に「yard」と呼ばれ、「garden」は特に野菜や花を育てる「菜園・花壇」のエリアを指すことが多いです。そのため、アメリカ人に「I have a garden.」と言うと、「本格的に家庭菜園をしているんだな」と解釈されることがあります。
庭にまつわる興味深い慣用句に、「lead someone up the garden path」という表現があります。直訳すると「人を庭の小道へ連れて行く」ですが、実際には「(甘い言葉で)人を欺く、騙す」という意味で使われます。迷路のように入り組んだ美しい庭の奥へと誘い込み、相手を混乱させる様子から生まれたイギリス英語らしい表現です。
また、日常会話でよく使われる「common or garden」という風変わりなフレーズもあります。「ありふれた」「どこにでもある」という意味ですが、これは植物図鑑などで、野生の珍しい種に対して、庭によく生えている一般的な種を指していたことに由来します。
さらに、イギリスの有名な小説のタイトルでもある「The Secret Garden(秘密の花園)」という言葉が象徴するように、英語圏において庭は「個人の内面」や「隠された美しさ」のメタファーとして使われることが多々あります。
このように、英語における「庭」は、単なる家の外の空間ではなく、歴史的に「大切に囲い込み、育む場所」としての意味を持ち続けています。同じ「庭」でも、国による言葉のチョイスや慣用句に注目することで、その土地の人々がどのように自然と向き合ってきたかが見えてくるはずです。
