英語で「嘘」を意味する最も一般的な単語は「lie」ですが、その背景には嘘の性質や相手への配慮、さらにはユーモア溢れる表現が数多く存在します。英語圏における「嘘」の捉え方を知ると、コミュニケーションの機微が見えてきます。
まず、最も基本となる「lie(嘘)」や「liear(嘘つき)」という言葉です。これは「意識的に事実ではないことを言う」という強い非難のニュアンスを含みます。そのため、日常会話ではストレートに「You are a liar(君は嘘つきだ)」と言うと、非常に強い攻撃性を帯びてしまいます。そこで、もっと軽い嘘や悪意のない嘘には別の言葉が使われます。
例えば、罪のない小さな嘘や、子供がつくような可愛らしい嘘は「fib」と呼ばれます。また、相手を傷つけないための「思いやりのある嘘」は「white lie(白い嘘)」と表現されます。日本語の「嘘も方便」に近いニュアンスですが、英語では「白」という色を使って、その嘘に悪意がないことを象徴させているのが興味深い点です。
「嘘」にまつわる面白い慣用句もたくさんあります。子供たちの間でよく使われる有名なフレーズに「Liar, liar, pants on fire!」というものがあります。嘘をついた相手を囃し立てる際に使われ、「嘘つき、嘘つき、お前のズボンが燃えてるぞ!」という韻を踏んだリズムの良い言葉です。19世紀の詩が由来という説もあり、現代でも映画やドラマのセリフで耳にすることがあります。
また、冗談半分で相手を担ぐような嘘は「pulling someone’s leg(誰かの足を引っぱる)」と表現します。日本語の「足を引っぱる」は邪魔をするという意味ですが、英語では「からかう」「嘘を信じ込ませる」という意味になります。相手が驚いているのを見て「I’m just pulling your leg!(冗談だよ!)」と種明かしをするのは、親しい間柄での定番のやり取りです。
少し変わった表現に「economical with the truth」があります。直訳すると「真実を節約する」となりますが、これは「(都合の悪いことを隠して)真実をすべて語らない」という、政治家や公的な場での遠回しで皮肉めいた「嘘」の表現です。
文法的な側面では、「嘘をつく」と言うときは「tell a lie」と不定冠詞の「a」を使いますが、「真実を言う」ときは「tell the truth」と定冠詞の「the」を使います。嘘は数限りなく存在するけれど、真実はたった一つしかない、という英語圏の論理的な思考がこの冠詞の使い分けに現れていると言えるでしょう。
このように、英語には「嘘」を指す言葉がいくつも存在し、それぞれに歴史や道徳観、遊び心が反映されています。単なる「lie」だけで片付けず、その「嘘」が何色なのか、どんな重みを持っているのかを意識してみると、英語の表現力がさらに豊かになるはずです。
