英語で「犬」は「dog」と呼ばれます。単なるペットとしての枠を超え、「Man’s best friend(人間の最良の友)」と称されるように、英語の表現や慣用句には人間と犬との密接で長い歴史が反映されています。
意外なことに、「dog」という単語自体の語源は完全には解明されていません。古英語では「hund(現代のhound)」という言葉が一般的でしたが、14世紀頃から「dog」が主流になりました。現代では、子犬は「puppy」、猟犬は「hound」、雑種は「mutt」や「mixed-breed」と、用途や種類によって細かく呼び分けられます。
犬にまつわる慣用句には、その忠実さや身近さを象徴するものが多くあります。例えば「Every dog has his day」という言葉があります。直訳すると「どの犬にも彼の日がある」ですが、これは「誰にでも一生に一度は幸運や晴れ舞台が巡ってくる」という意味の励ましの言葉です。また、日本語では運のいい人を「ラッキーボーイ」などと言いますが、英語では「lucky dog」という表現も一般的で、親しみを込めて使われます。
一方で、かつての犬が「労働力」として過酷な環境に置かれていた歴史を反映した表現も少なくありません。「work like a dog(身を粉にして働く)」や「sick as a dog(ひどく体調が悪い)」、「dog-tired(くたくたに疲れた)」といったフレーズは、犬が今ほど愛玩動物としてではなく、厳しい使役動物であった時代背景を物語っています。さらに、弱肉強食の激しい競争社会を「dog-eat-dog world」と呼ぶのも、生存競争の厳しさを犬に投影した表現です。
勝負事や社会的な立場に関するユニークな言葉に「top dog」と「underdog」があります。集団のリーダーや勝者を「top dog」、勝ち目の薄い人や弱者を「underdog」と呼びます。これは、かつて木材を挽く際に上に立つ者と下に潜り込む者の力関係から生まれたと言われています。現代でも、スポーツなどで格下のチームを応援する心理を「underdog effect」と呼んだりします。
また、土砂降りの雨を「raining cats and dogs」と表現するのは有名ですが、その由来は諸説あります。北欧神話の雷神と犬の関わりや、かつての家屋の屋根から動物が滑り落ちたという説など、真偽はともかく「犬」が自然現象を形容するほど身近な存在であったことが伺えます。
このように、英語の「犬」は、家族のような親愛の情と、過酷な労働を共にした戦友のような敬意、そして社会の縮図としてのメタファーを含んでいます。単語一つをとっても、人間と犬がいかに深く関わり合って歩んできたかを感じさせてくれます。
