英語で「お茶」を意味する「tea」は、日常的に使われる非常に身近な単語です。しかし、その呼び方のルーツや歴史的背景を探ってみると、世界をまたにかけた交易の歴史や、イギリス独自の文化が見えてきます。
まず興味深いのは、「お茶」の呼び方が世界で大きく2つの系統に分かれている点です。日本語の「チャ」やトルコ語の「チャイ」のように「cha」に近い音と、英語の「ティー」やフランス語の「テ」のように「tea」に近い音の2つです。これは、かつて中国からお茶がどのように運び出されたかというルートに由来します。広東語などの陸路や広東港ルートで伝わった地域は「チャ」に、福建省の言葉である「テ」の音が海路でヨーロッパへ伝わった地域は「ティー」の系統になったと言われています。
日本語では「紅茶」と呼びますが、英語では「black tea」と表現されます。これは、日本人がお茶を淹れた後の「液体の色(赤)」に注目したのに対し、英語圏では乾燥させた「茶葉の色(黒)」に注目したためだと言われています。同じものを見ていても、どこに焦点を当てるかという文化的な視点の違いが面白いところです。
イギリスの文化を語る上で欠かせない「Afternoon Tea(アフタヌーンティー)」にも歴史があります。これは19世紀半ば、ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが、当時のイギリスの習慣だった「朝食と夕食の2回きりの食事」の間の空腹を紛らわせるために始めたものとされています。彼女が友人を招いてお茶を楽しんだことが貴族の間で流行し、現代まで続く優雅な習慣として定着しました。
また、お茶にまつわる慣用句も英語には多く存在します。例えば「not my cup of tea」という表現。直訳すると「私のカップの一杯のお茶ではない」となりますが、実際には「それは私の好みではない」「興味がない」という意味で使われます。イギリス人にとってお茶がどれほど個人的で、こだわりが分かれる飲み物であるかを象徴するような表現です。
さらに、最近のSNSなどでよく使われるスラングに「spill the tea」があります。「お茶をこぼす」という意味から転じて、「秘密を漏らす」「噂話をする」という意味で使われます。1990年代のドラァグ文化から広まったとされる比較的新しい表現ですが、現代の若者言葉の中にも「tea」という単語が息づいていることがわかります。
文法的な側面では、teaは通常「数えられない名詞(不可算名詞)」として扱われますが、カフェなどで「Two teas, please.(お茶を2つ)」と言う場合には、カップの数を指すものとして数えられる名詞のように扱われることもあります。
このように、たった一つの「tea」という単語の裏側には、海を越えた交易の記憶や、日々の生活を彩るこだわりが詰まっています。一杯のお茶を楽しみながら、その言葉がたどってきた歴史に思いを馳せてみるのも、英語学習の醍醐味かもしれません。
