英語で「キッチン用品」を指す言葉は、その範囲や用途によって「kitchenware」「utensils」「cutlery」など、細かく使い分けられています。それぞれの言葉の裏側にある歴史や文化を知ると、台所という場所が単なる調理場以上の意味を持っていることが分かります。
一般的にキッチンにある道具全般を指すのは「kitchenware」ですが、手で扱うヘラやトングなどの調理器具は「utensils」と呼ばれます。この「utensil」の語源は、ラテン語の「使用可能なもの(utensilis)」に由来し、生活に役立つ実用的な道具というニュアンスが強く含まれています。一方で、スプーンやフォークなどの食卓で使う刃物類は「cutlery(カトラリー)」と区別されますが、これは「切るもの」を意味するフランス語が由来となっており、かつてナイフが食事の主役だった歴史を物語っています。
キッチンに隣接する「pantry(食品貯蔵庫)」という言葉にも面白い由来があります。これはラテン語で「パン(panis)」を意味する言葉から派生しました。もともとは「パンを保管する場所」を指していましたが、時代とともに食材全般を貯蔵する場所へと意味が広がっていったのです。ちなみに、親しい仲間を意味する「companion」も、「一緒にパンを食べる人」という語源を持っており、食べ物を分かち合う文化と言語がいかに密接かが伺えます。
キッチン用品にまつわる慣用句で有名なものに「born with a silver spoon in one’s mouth」があります。「銀のスプーンを口に咥えて生まれてくる」という直訳通り、「裕福な家庭に生まれる」という意味です。かつて銀製品は非常に高価で、富と特権の象徴でした。現代でも、プラスチック製であっても食事に使う道具を「silverware」と呼ぶことがあるのは、当時の名残だと言われています。
また、驚くほど大量のものを指す際に「everything but the kitchen sink」という面白い表現が使われます。直訳すれば「台所のシンク以外すべて」となりますが、これは「考えられる限りのあらゆるもの」を意味します。第二次世界大戦中、金属不足を補うために家庭のあらゆる金属が回収されましたが、陶器製のシンクだけは持っていけなかった、という逸話が由来の一つとされています。
文法的な特徴として、「cutlery」や「silverware」は不可算名詞(数えられない名詞)として扱われます。たとえフォークが10本あっても、全体を一つの集合体として捉えるため、「many cutleries」とは言わず「some cutlery」や「pieces of cutlery」と表現するのがルールです。
このように、キッチン用品にまつわる英語は、生活の知恵や歴史的な階級社会、さらには戦争時代の記憶までをも映し出しています。毎日使う道具の名前一つひとつに、英語圏の人々が歩んできた文化の足跡が刻まれていますね。
