メールアドレスの「@」や、SNSで見かける「#」。私たちは毎日当たり前のようにこれらの記号を使っていますが、英語圏における正式名称やその成り立ちを知ると、タイピングが少し楽しくなるような意外な歴史が見えてきます。
まず、アンドを意味する「&」は、英語で「ampersand(アンパサンド)」と呼ばれます。この形は、ラテン語で「〜と」を意味する「et」の2文字を組み合わせて書いた合字(リガチャ)が変化したものです。19世紀頃のイギリスでは、この記号はアルファベットの「27番目の文字」としてABCの最後に教えられていました。当時の子供たちが「X, Y, Z, and per se and(Z、そしてそれ自体でアンド)」と唱えていたのが訛り、「ampersand」という名前になったという説が有力です。
次に、メールに欠かせない「@」。日本語では「アットマーク」と呼びますが、英語では単に「at sign」や「at symbol」と呼ばれます。もともとは中世の貿易商が「〜につき(at the rate of)」という価格の単位を示すために使っていた略記でした。1971年、電子メールの考案者レイ・トムリンソンが「ユーザー名と所在地の間に、普段の名前には使われない記号を」と考え、キーボードの中からこの記号を選んだことで、現代のデジタル社会に欠かせない存在となりました。
SNSで多用される「#」も興味深い記号です。一般的には「hash(ハッシュ)」や「hashtag」として知られていますが、アメリカ英語では古くから「pound sign(パウンドサイン)」と呼ばれ、重さの単位(ポンド)や番号(No.)を示すのに使われてきました。さらに、技術的な正式名称は「octothorpe(オクトソープ)」と言います。電話機の開発者が、8つの端(octo)を持つこの形に、お気に入りの選手の苗字「Thorpe」を組み合わせて名付けたという遊び心あふれる由来があります。
また、注釈で見かける「*」は「asterisk(アスタリスク)」と呼ばれます。これはギリシャ語で「小さな星」を意味する「asteriskos」が語源です。数千年前の古代バビロニアでも、星を表す記号として似たような形が使われていた形跡があり、非常に長い歴史を持つ記号の一つです。
このように、キーボードに並ぶ特殊文字は、かつての速記術や貿易の習慣、そしてデジタル時代の偶然が重なり合って現在の地位を築いてきました。記号一つ一つの「名前」と「由来」を意識してみると、無機質な画面の文字にも、歴史の重みを感じることができるのではないでしょうか。
