英語の文章を組み立てる上で欠かせない「動詞」。英語では「verb」と呼びますが、この単語の成り立ちや、英語特有の性質である「句動詞」、そして最も基本的な動詞「be動詞」の謎を紐解くと、英語という言語のダイナミズムが見えてきます。
まず「verb」という単語そのものに注目してみましょう。この語源はラテン語で「言葉」を意味する「verbum」です。つまり、古くから動詞は「言葉の中の言葉」、すなわち文章において最も核心となる要素であると考えられてきました。実際、英語の文章は動詞がなければ成立しません。動詞は単なる動作を示すだけでなく、その文章の「命」を吹き込む存在です。
英語を学ぶ人を最も悩ませ、かつ面白いのが「be動詞」です。「am, is, are, was, were…」と、主語や時制によって形がこれほど劇的に変わる動詞は他にありません。実はこれ、もともとルーツが異なる3つの異なる動詞が、歴史の中で無理やり一つにまとめられた結果なのです。例えば「am/is」の系統、「be」の系統、「was/were」の系統が、長い年月をかけて「存在を表す一つのグループ」として統合されました。be動詞が不規則極まりないのは、いわば「歴史の継ぎ接ぎ」がそのまま残っているからなのです。
また、英語の特徴的な表現に「phrasal verbs(句動詞)」があります。「get up」や「look after」、「put up with」のように、基本動詞と前置詞などが組み合わさって全く別の意味を作るものです。これは、ゲルマン語派としてのルーツを持つ英語が、限られた基本動詞をレゴブロックのように組み合わせて、複雑な状況を表現しようとした知恵の産物です。難しい学術用語を使わなくても、これらを使いこなすだけで日常会話のほとんどをカバーできるのが英語の合理的な側面でもあります。
文化的な背景で見ると、英語は「active voice(能動態)」を好む言語だと言われます。「誰が何をしたか」を明確にする動詞の使い方は、責任の所在をはっきりさせる欧米のコミュニケーションスタイルを反映しているとも考えられています。一方で、あえて主語を隠す「passive voice(受動態)」は、客観性を保つ科学論文や、責任をあいまいにしたい政治的な文脈で多用されるなど、動詞の使い分けには話し手の意図が色濃く反映されます。
このように、英語の「動詞」は単なる文法上のルールではなく、言語の歴史的な変遷や、人々の論理的な思考回路が凝縮されたものです。一つひとつの動詞が持つ背景を知ることで、無機質な単語の羅列が、より血の通った「言葉」として感じられるようになるのではないでしょうか。
