英語で「才能」を語る際、最もよく耳にするのは「talent」と「gift」でしょう。どちらも優れた能力を指しますが、その語源やニュアンスの違いには、西洋の宗教観や歴史が深く関わっています。
まず「talent」という言葉ですが、実はもともと「才能」という意味ではありませんでした。古代ギリシャやローマでは、重量や通貨の単位(タラント)を指す言葉だったのです。これが「才能」という意味に変わったきっかけは、新約聖書の「タラントの例え話」にあります。「主人が旅に出る際、僕(しもべ)たちにお金(タラント)を預け、それをどう増やしたかを問う」という話が広まる過程で、「神から預けられたお金=神から与えられた能力」という解釈が定着し、現在のような意味で使われるようになったのです。
一方、「gift」は文字通り「贈り物」を意味します。ここには「神様から贈られた天賦の才」というニュアンスが強く含まれています。そのため、努力して身につけた技術よりも、生まれつき備わっている特別な能力を指す際に好んで使われます。教育の現場で、並外れた才能を持つ子供を「gifted child(ギフテッド・チャイルド)」と呼ぶのも、「天からの贈り物を持つ子」という敬意が込められているからです。
日常会話で使えるカジュアルな表現としては、「knack」があります。「He has a knack for cooking(彼は料理のコツを心得ている)」のように使い、天性の才能というよりは、ちょっとしたコツや要領の良さを指す便利な言葉です。また、多才な人を指す「Jack of all trades」という表現もありますが、これには続きがあり、「master of none(何一つ極めていない)」と続くことで「器用貧乏」という皮肉になることもあるので注意が必要です。
文法的な使い分けにも特徴があります。「gifted」は「授けられている」という受け身の性質を持つため、前置詞「with」を伴って「be gifted with ~(~の才能に恵まれている)」と表現されることが多いです。対して「talented」は「be talented at ~(~の才能がある)」のように、具体的な分野を指す前置詞「at」や「in」とセットで使われる傾向があります。
このように、英語の「才能」にまつわる言葉は、かつての通貨単位から神の贈り物まで、その背景に壮大なストーリーを秘めています。「自分にはどんなタラント(預けられたもの)があるのだろう?」と考えてみると、単語の響きが少し違って聞こえてくるかもしれません。
