太陽系で最も内側を回る惑星、水星。英語では「Mercury」と表現しますが、この名前には古代の人々の神話的な世界観や、ユニークな形容詞への派生など、興味深い背景が隠されています。
「Mercury」という名前の由来は、ローマ神話に登場する「商業と旅の神・メルクリウス(Mercury)」です。ギリシャ神話のヘルメスに相当するこの神は、翼の生えた靴を履き、神々の伝令役として空を駆け巡るとされています。水星が他の惑星に比べて非常に速いスピードで夜空を移動することから、その俊足ぶりを神の姿に重ねて名付けられました。
実は、この「Mercury」という単語は、惑星だけでなく金属の「水銀」も意味します。常温で液体として存在する唯一の金属であり、コロコロと素早く形を変えて動く様子が、やはりあの素早い神様を連想させたためです。ちなみに、水銀の元素記号「Hg」はラテン語の「Hydrargyrum(水の銀)」から来ていますが、英語の一般名称としてはMercuryが使われます。
この「動きが素早い」「流動的である」というイメージは、人の性格を表す形容詞「mercurial」にも受け継がれています。これは「機転が利く」「活発な」という意味もありますが、一方で「気まぐれな」「感情が変わりやすい」というネガティブな意味で使われることも多くあります。かつての占星術で、水星の影響を受けて生まれた人は気分屋になると信じられていたことが語源です。
現代の日常会話でよく耳にする表現に「Mercury is in retrograde(水星が逆行している)」があります。これは本来、占星術の用語ですが、最近では「通信トラブルが起きる」「物事がスムーズに進まない」時期を指すフレーズとして、SNSや会話の中で「最近ツイてないのは水星逆行のせいだ」といった冗談交じりの文脈で使われることがあります。
文法的なルールとしては、惑星としての水星を指す場合は固有名詞となるため、頭文字は常に大文字で表記します。また、月(the moon)や太陽(the sun)とは異なり、惑星の名前には原則として定冠詞「the」をつけずに「Mercury is the closest planet to the Sun.」のように表現するのが一般的です。
このように、英語の「水星」は、単なる天体の名前を超えて、「速さ」や「変化」の象徴として言葉の世界に定着しています。神話の神様から金属、そして性格診断までつながる言葉の広がりを知ると、夜空の小さな輝きが少し違って見えてくるかもしれません。
