英語で「職場」を指す言葉は、物理的な場所を表す「office」や、組織を表す「company」が一般的ですが、その語源や独特な慣用句を紐解くと、欧米の労働文化や歴史的な背景が浮かび上がってきます。
まず「company(会社・仲間)」という単語の語源は非常に興味深いものです。ラテン語の「com(共に)」と「panis(パン)」が組み合わさった言葉で、原義は「パンを分け合って食べる人々」を指します。かつて食事を共にすることが信頼関係や結束の証であったことから、同じ目的を持って集まる組織をこう呼ぶようになりました。職場とは単なる労働の場ではなく、生活の糧を分かち合うコミュニティであるという温かい響きが隠されています。
職場の環境を表す慣用句として有名なのが「water cooler chat(給水器の周りでの雑談)」です。アメリカのオフィスには冷水機(ウォータークーラー)が置かれていることが多く、そこで社員同士が偶然出会って交わす立ち話が、情報交換や人間関係の構築に重要だと考えられてきました。日本の「給湯室」や「たばこ部屋」に近い感覚ですが、英語圏ではこれがオフィスのコミュニケーション文化の象徴として定着しています。
また、職種による分類でよく使われる「white-collar(事務職)」や「blue-collar(肉体労働職)」という表現も、職場文化から生まれました。20世紀初頭、事務職の人々が汚れの目立つ白いシャツを着ていたのに対し、現場作業員は汚れに強いデニムなどの青い作業着を着ていたことに由来します。
日常会話で使える便利な表現に「Let’s call it a day」があります。直訳すると「それを1日と呼ぼう」ですが、実際には「今日の仕事はこれで切り上げよう(終わりにしよう)」という意味で使われます。かつて、1日の労働成果を確認して区切りをつけたことから生まれたフレーズで、残業を切り上げて帰宅を促す際などに頻繁に使われます。
文法的な使い分けとして注意したいのが、「仕事中」を表す時の前置詞です。「I am at work」と言うと「(場所に関わらず)仕事をしている状態」を指しますが、「I am in the office」と言うと「物理的にオフィスの中にいる」ことを強調します。リモートワークが普及した現代では、この使い分けがより重要になっています。
このように、英語の「職場」にまつわる言葉には、パンを分け合う仲間意識から、オフィスでの雑談文化まで、人間味あふれる背景が詰まっています。単なる仕事場としてだけでなく、言葉の由来から職場のあり方を見つめ直してみるのも面白いかもしれません。
