英語を学んでいて最初につまずくポイントのひとつに、「th」の発音がありますよね。「think」のようなスーッと息を出す音と、「this」のように声を伴う音。どちらも日本語にはない音なので、区別するのはなかなか大変です。でも、なぜ一つの綴りで二つの音があるのでしょうか。
理由のひとつは、古い英語の名残です。中世の英語では、「th」の音を表すために「þ(ソーン)」や「ð(エス)」といった特別な文字が使われていました。実はこの二つは、それぞれ「think」の音と「this」の音を区別するための文字でした。ところが、印刷技術がヨーロッパから入ってきたとき、印刷機の活字には「þ」や「ð」がなく、代わりに「th」が使われるようになりました。その結果、二つの違う音が同じ綴りで書かれることになったわけです。
ただし、この二種類の音が完全に無秩序というわけではありません。たとえば「think」「thank」「theory」など、単語の最初に来るときは息だけの音になることが多いです。「無声音」と言われています。一方で、「the」「this」「those」のような頻繁に使う単語では声を伴う音になることが多いです。こちらは「有声音」と呼ばれます。つまり、ある程度のパターンはあるわけです。
英語の学習者からすると「どうして一つにまとめちゃったの」と思うかもしれませんが、歴史的には必要に迫られての変化だったんですね。もし「þ」や「ð」が今も残っていたら、発音の区別はもっとわかりやすかったかもしれません。でも、その代わりにアルファベットが増えて覚えることも多くなっていたでしょう。
つまり「th」の二つの音は、不便さの裏に歴史的な必然があるというわけですね。英語を勉強していて戸惑うポイントも、背景を知ると「なるほど」と思えてきます。難しさの中に歴史が隠れていると考えると、ちょっとした発見が楽しく感じられるかもしれませんね。