日本語になったドイツ語の外来語一覧【語源・由来】

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ドイツ語の外来語は、江戸時代は蘭学を通して、明治時代は欧米列強の近代的な技術を取り入れる過程で日本に伝わり、日本語として定着しました。日本語になった言葉は、法学、医学、化学、物理学などの学術用語から、音楽、登山、スキーなどの娯楽まで多岐に渡ります。今回は、ドイツ語の外来語の意味・語源・由来についてご紹介します。

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アルバイト Arbeit

アルバイトはドイツ語で「労働、仕事」を意味するarbeitに由来します。

ドイツ語では「労力、任務、作品、職場」など色々な意味がある言葉ですが「短時間労働」という意味では使われていません。日本では学生が隠れて学費を稼ぐことを指す隠語として使われ始め、和製外来語として一般化しました。英語でアルバイトのことはpart time jobやpart time workと言います。

ごがくねこ
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語源は英語のorphan(孤児)と同じで、ゲルマン祖語のarbaidiz(労苦)や、インド・ヨーロッパ祖語の「孤児」という言葉に由来します。辛い意味を持つ単語ですね。

アレルギー Allergie

アレルギーはドイツ語のAllergieに由来し、語源をさかのぼるとギリシャ語で「変わった作用(allos+ergo)という意味があります。1906年にオーストリアの医師クレメンス・フォン・ピルケの論文で初めて用いられました。

アンチテーゼ Antithese

アンチテーゼはドイツ語で「反命題、反定立」を意味するのAntitheseに由来します。この言葉はギリシャ語のanti(否定)とthesis(命題)という言葉が語源です。アンチテーゼはある主張を否定するために提起される反対の主張のことで、テーゼ、ジンテーゼと共に弁証法の一つです。

イデオロギー Ideologie

イデオロギーはドイツ語のIdeologieに由来します。

イデオロギーはギリシャ語のidéā(観念)と-logíā(~の研究)の合成語で、本来は学問の1つイデオロジー(観念学)のことを意味していました。18~19世紀にフランスで流行し、その後ドイツの哲学者カール・マルクスが論じたことで世界的に有名になりました。

ごがくねこ
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英語はideology(アイディオロジー)ですが、日本にはドイツ語経由で入って来たのでイデオロギーという発音で呼ばれています。

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ウラン Uran

ウランは天王星ウラヌス(Uranus)の名前に由来します。

1789年にドイツの化学者クラプロートによって発見され、同時期に発見された天王星ウラヌスにちなんで命名されました。語源をさかのぼると、天王星ウラヌスはギリシャ神話の天神ウラノス(Uranos)に由来し、更にウラノスはギリシャ語の「」という言葉に由来します。

エーデルワイス Edelweiß

エーデルワイスはドイツ語で「高貴な白」という意味があります。edel(エーデル)は「高貴な」、weiß(ワイス)は「白」のことです。アルプス山脈などに分布し、オーストリアやスイスでは国花に指定されています。

ごがくねこ
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ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』でも同名の曲が出てくることで有名ですね。

エネルギー Energie

エネルギーはドイツ語のEnergieに由来します。

語源を遡るとギリシャ語のergon(仕事) に由来します。イギリスの物理学者トマス・ヤングがラテン語のvis(力)の代わりの語としてenergeia(エネルギー)という言葉を提案したことが発端です。

ごがくねこ
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英語の発音はエナジー(energy)で、エネルギーはドイツ語由来の発音です。

オブラート Oblate

オブラートはドイツ語のOblateやオランダ語のOblaatに由来します。

本来オブラートはキリスト教の聖体(特殊なパン)のことを意味し、日本ではデンプンで作られた薄い膜のこと指します。「オブラートに包む」という表現は苦い粉薬をオブラートで包むことによって、苦みを和らげることに由来しています。

ごがくねこ
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英語ではeatable paper(食べられる紙)とも呼ばれます。

ガーゼ Gaze

ガーゼはペルシア語のQazzや、都市名のガザ(Gaza)に由来するそうです。ガザはパレスチナの都市で、以前は織物の産地でした。日本では他の医薬品と同様に、明治時代にドイツから流入され、一般的に使われるようになりました。

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カテゴリ Kategorie

カテゴリはドイツ語のKategorieに由来します。元々カテゴリーはギリシャ哲学において物質の基礎的な元素である「土、水、風、火」などを表していた語です。

カフェイン Kaffein

カフェインはドイツ語のKaffeinに由来し、コーヒー(Kaffee)に因んで命名されました。カフェインは1819年にドイツの化学者ルンゲ(Friedlieb Ferdinand Runge)によって世界で初めてコーヒーから分離され、コーヒーに存在していることから当初はKaffebaseと呼ばれました。

ごがくねこ
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日本語のコーヒーはオランダ語のkoffie、更にはアラビア語のqahwaが語源です。

カプセル Kapsel

カプセルはドイツ語のKapselに由来し、語源をさかのぼるとラテン語で「小箱」を意味するcapsulaに由来します。英語のcapsuleも同じ語源です。

カリウム Kalium

カリウムはドイツ語のKaliumに由来し、語源をさかのぼるとアラビア語の「植物の灰(al qalyah)」という言葉に由来します。英語ではポタシウム(potash)です。

カルテ Karte

カルテはドイツ語で「カード」を意味するKarteに由来し、語源をさかのぼるとラテン語のcharta()に由来します。英語のcardと同じ語源です。

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日本語では診療記録という意味で使われていますが、ドイツ語のカルテは単にカードという意味しかありません。明治時代に誤用として広まり、現在まで使われ続けています。

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カルテル Kartell

カルテルはドイツ語のKartellに由来します。語源を遡るとフランス語(cartel)やラテン語のcharta()に由来し、英語のcartelとも同じ語源になります。

カルテルは企業同士の独立性を維持しつつ、市場を独占するために協定を結ぶことで、日本語では「企業連合」と表します。

ごがくねこ
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類似語にトラスト(trust)とコンツェルン(konzern)がありますが、トラストは独立性が失われ企業が1つになる形態のこと、コンツェルンは企業がグループとして結合する形態のことです。

ギプス Gips

ギプスはドイツ語やオランダ語で「石膏」を意味するGipsに由来します。ギプスの歴史は古く、メソポタミア文明の時から使用され始めたそうです。

グミ Gummi

グミはドイツ語で「ゴム」を意味するGummiが語源です。子供の噛む力の強化と歯の予防のために、1920年にドイツのハリボー社(HARIBO)が開発しそうです。

ゲル Gel

ゲルはドイツ語のGelに由来し、語源を遡るとラテン語で「固まった、凍った」を意味するgelatus(ゲラトゥス)に由来します。ゲルにはゼリー、寒天、ゼラチン、豆腐、こんにゃくなどが含まれます。

ゲレンデ Gelände

ゲレンデはドイツ語で「土地」を意味するGeländeに由来します。geはドイツ語で集合を表わす接頭語、ländeは「土地」のことです。本来は単に土地を指す言葉でしたが、後にスキー場を指すようになりました。

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コラーゲン Kollagen

コラーゲンはドイツ語のKollagenに由来します。語源を遡るとギリシャ語で「膠(にかわ)」を意味するkolla(コラ)と「~から生じた」を意味するgen(ゲン)という言葉に由来します。合わせると「膠から生じた」という意味になります。

ごがくねこ
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膠は動物の骨や皮から作られたゼラチンで、接着剤などで用いられます。

シャーレ Schale

シャーレはドイツ語で「」を意味するSchaleに由来します。ドイツの細菌学者ペトリ(Julius Richard Petri)が発明したのでペトリ皿とも呼ばれています。

シュプレヒコール Sprechchor

シュプレヒコールはドイツ語で「話す」を意味するSprechchorに由来します。元々は古代ギリシャの合唱劇や演劇で交互に朗読することを指したそうです。現在ではデモや集会などで人々が同じフレーズを一斉に繰り返す行為のことを指します。

ゼミナール Seminar

ゼミナールはドイツ語で「演習、研究室」を意味するSeminarに由来します。語源をさかのぼると、ラテン語のseminarium(苗床、養成所)という言葉に由来します。sēmenは種、-āriumは場所を意味します。英語もドイツ語も同じスペルのseminarですが、英語のseは「」、ドイツ語のseは「」になるので、発音はそれぞれ異なります。

ごがくねこ
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日本語でも、セミナーなら英語由来、ゼミゼミナールならドイツ語由来の発音ということになります。

タクト Takt

タクトはドイツ語で「拍、小節」を意味するTaktに由来します。これは「指揮棒」を意味するtaktstock(タクトシュトック)の略称です。

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ダックスフント Dachshund

ダックスフントはドイツ語で「アナグマの犬」という意味があります。dachs(ダックス)はアナグマ、hund(フント)はのことです。アナグマを狩るために改良されたことから命名されました。

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英語の発音だとダックスフンドですが、ドイツ語では末尾のdは濁らないためフントになります。

チタン Titan

チタンはギリシャ神話の巨人タイタン(Titan)が語源です。1795年にドイツの化学者クラプロート(Martin Heinrich Klaproth)が発見し、ギリシャ神話のタイタンに因んで「チタン」と命名したことに由来します

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1791年にも、イギリスの聖職者グレーガー(William Gregor)が発見しmenachite(メナカイト)と名付けましたが、それほど広まりませんでした。

テーゼ These

テーゼはドイツ語で 「命題、定立」を意味するTheseに由来します。テーゼは真偽が確定している意見や理論のことです。アンチテーゼ、シンテーゼと共に弁証法の一つです。

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ジンテーゼは肯定(テーゼ)と否定(アンチテーゼ)を統一して矛盾を解決する更に高度なテーゼのことで、ドイツ語で「総合」を意味します。

テーマ Thema

テーマはドイツ語のThemaに由来し、語源をさかのぼるとギリシア語の「置く、置かれたもの」という言葉に由来します。主題対象課題のことや、デザインテーマのような基調となる考えのことも意味します。

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英語はtheme(シィーム)なので、日本語のテーマの発音はドイツ語のthemaに由来します。

デマゴギー Demagogie

デマゴギーはドイツ語のDemagogieに由来し、語源をさかのぼるとギリシャ語で「民衆を導く(dēmos+agein)」という語に由来します。

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デマゴギーは他者を煽動するために意図的に流す「噂、嘘情報、フェイクニュース」のことで、デマはデマゴギーの略です。デマを流す人物のことはデマゴーグ(demagog)と言います。

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ノイローゼ Neurose

ノイローゼはドイツ語のNeuroseに由来し、語源をさかのぼるとギリシャ語で「神経の病気」という意味があります。ギリシャ語でneur(ノイロ)は「神経」、ose(オーゼ)は「状態、病気」を意味します。

ごがくねこ
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現在では概念が曖昧で幅広いため医療用語としては使用していないそうです。

バウムクーヘン Baumkuchen

バウムクーヘンはドイツ語で「木のケーキ」を意味するBaumkuchenが語源です。baum(バウム)は「木」、kuchen(クーヘン)は「ケーキ」を意味します。断面が木目に見えることから名付けられました。

ごがくねこ
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バームクーヘンの発祥は議論がまとまっていないようですが、原型は紀元前のギリシャで作られたオベリアスという串で作られたパン菓子に由来するそうです。

ハンバーグ  Hamburg

ハンバーグはドイツのハンブルク(Hamburg)で誕生したことに由来します。

18世紀頃に労働者たちが安価な肉をひき肉にして焼いたのが始まりとされています。ドイツではフリカデレ(frikadelle)と呼ばれ、代表的な家庭料理の一つになっています。18~20世紀に多くのドイツ人がアメリカへ渡った際にハンブルクの料理(hamburg)として世界中に広まりました。

ヒエラルキー Hierarchie

ヒエラルキーはドイツ語のHierarchieに由来し、語源をさかのぼるとギリシャ語の「階層関係(hierarchia)」に由来します。本来は聖職者による支配体系を表した言葉で、現在では様々な階層関係でも用います。主にピラミッド型の組織構造で描かれます。

ヒステリー Hysterie

ヒステリーはドイツ語やオランダ語のHysterieに由来します。

語源をさかのぼるとギリシャ語で「子宮」という意味があり、ヒステリーが子宮の異常によって起こると考えられていたため名付けられたそうです。近代以降ではフランスの神経病学者ブリッケ(Paul Briquet)が初めて提唱しました。

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プレパラート Präparat

プレパラートはドイツ語のPräparatに由来し、観察用にpreparation(調整) することから名付けられました。英語はpreparation(プレパレーション)といいます。

ボーゲン Bogen

ボーゲンはドイツ語で「弓、弧」を意味するBogenが語源です。ボーゲンは重心移動により向きを変えるスキーの回転技術の一つですが、ドイツではシュヴング(schwung)とも呼ばれているそうです。

ポルターガイスト Poltergeist

ポルターガイストはドイツ語で「騒がしい霊」を意味するPoltergeistが語源です。poltern(ポルタ―)は「騒々しい音を立てる」、geist(ガイスト)は「霊」を意味する言葉です。

ホルモン Hormon

ホルモンはドイツ語のHormonに由来し、語源をさかのぼると古代ギリシャ語で「刺激する(hormān)」という意味があります。食用の牛や豚の内臓を指す語としても使われています。

ボンベ Bombe

ボンベはドイツ語で「爆弾」を意味するBombeに由来します。日本では高圧の気体や液体を入れるための耐圧容器のことを指します。ドイツ語の耐圧容器はgasflascheです。

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メス Mes

メスはドイツ語で「測る」を意味するMessenが語源です。フラスコ、シリンダー、ピペットなどの実験器具の接頭辞として用いられます。

メスシリンダー Messzylinder

メスシリンダーはドイツ語で「測る円筒」を意味するMesszylinderが語源です。mes(メス)は「測る」、zylinder(シリンダー)は「円筒」を意味する言葉です

メルヘン Märchen

メルヘンはドイツ語で「小さな物語」を意味するMärchenが語源です。

mär(メル)は「お話」、chen(ヘン)は「小さい」を意味する接尾辞です。狭義では神秘的なおとぎ話、広義では昔話、寓話、伝説、神話などを意味します。メルヘンの概念が形成されたのはグリム兄弟による『グリム童話』といわれています。

ヨーグルト Joghurt

ヨーグルトはドイツ語のJoghurtに由来し、語源をさかのぼるとトルコ語の「かき混ぜる(yoğurmak)」から派生したyoğurt(ヨウルト) という語に由来します。

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ヨーグルトの歴史は古く、約7000年前から食されているそうです。日本では1895年頃に残りの牛乳を利用して製造・販売された記録が残っているそうです。

ラガー Lager

ラガーはドイツ語で「貯蔵」を意味するLagerが語源です。

ラガーは低温で長時間かけて醸造・熟成させたビールのことです。元々ドイツのバイエルン地方で作られていて、秋にビール樽を洞窟の中に「貯蔵」し、翌年の春に取り出すことからラガーと呼ばれるようになったそうです。

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反対に、常温・短時間で製造されるものはエール(yale)と言います。

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リュックサック Rucksack

リュックサックはドイツ語で「背に負う袋」を意味するRucksackが語源です。ドイツ語の発音はルックザックで、日本語の発音がリュックなのはドイツ語で「背中」を意味するrücken(リュッケン)に由来するそうです。

ルクセンブルク Luxemburg

ルクセンブルクはドイツ語で「小さな城」という意味があります。10世紀頃に初代のルクセンブルク統治者であるジークフリート(Siegfried)が、現在のルクセンブルクに小さなお城を立てたことに由来するそうです。

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ルクセンブルクはベルギー、オランダとともにベネルクスと呼ばれる国の一つですね。

レフ Reflex

レフはドイツ語で「反射」を意味するreflex(レフレックス)の略称です。レフ版や一眼レフカメラなどのレフの語源です。

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レフ版は写真撮影の時に使う採光用の反射板のことです。

ワクチン Vakzin

ワクチンはドイツ語のVakzinに由来し、語源をさかのぼるとラテン語で「雄牛」を意味するvaccaに由来します。牛の天然痘をヒントにして世界初のワクチンが作られことから命名されました。

ワッペン Wappen

ワッペンはドイツ語で「紋章」を意味するWappenが語源です。現在では装飾や所属を示すために利用しますが、もともと中世ヨーロッパで騎士の盾に描かれていたのが起源といわれています。

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最近では英語由来のemblem(エンブレム)の方が一般的ですね。

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まとめ

今回は「日本語になったドイツ語の外来語」の意味・語源・由来を一覧形式でご紹介しました。紹介した単語の中には、ドイツ語だけが語源ではないものもありますが、日本語にはドイツ経由、もしくはドイツ語の発音で伝わったため、「ドイツ語の外来語」に区分しています。

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