英語に出てくる「X」は、ほかのアルファベットと比べるとちょっと特別な存在です。「xylophone(木琴)」のように「ズ」の音を出したり、「box」では「クス」と発音されたり。「X-ray」では記号のように使われることもありますよね。どうしてこんなに使い道が広いのでしょうか。
そもそも「X」はギリシャ文字の「Χ(カイ)」がもとになっています。ラテン語に取り入れられるとき、「cs」や「gs」のような音をまとめて表す便利な文字として使われました。つまり、「X」は最初から「複数の音をまとめる記号」だったんです。
英語に入ってからもその性格は引き継がれました。たとえば「box」は本来「boks」と書いてもよかったのですが、「X」で「ks」を一文字にしてしまったのです。スペルを短くできる「省略記号」としての役割ですね。
さらに近代になると、「X」は「未知のもの」を表すシンボルにもなりました。数学で「x」を使うのは、「まだ値がわからない数」という意味を込めたからです。また、ドイツの物理学者レントゲンが新しい放射線を発見したときも、正体が不明だったので「X-ray」と呼ばれました。
このように、「X」は音をまとめる実用的な文字であると同時に、「謎」や「未知」といった象徴的な意味も持つようになりました。2023年には、「Twitter」が「X」に名称を変更したことも話題になりました。
普段はあまり目立たない「X」ですが、その姿には言語の工夫と人間の想像力が込められています。「X」という一文字に隠された多彩な顔を知ると、少し見方が変わるかもしれませんね。