英語の「cloud(雲)」という言葉の語源を辿ると、意外な事実に突き当たります。実はこの言葉、もともとは「岩の塊」や「丘」を意味する「clod」と同じ語源から派生したものです。古代の英語では、空に浮かぶ白い塊が山や大きな岩のように見えたことから、この名称が使われるようになりました。13世紀頃までは、空に浮かぶ気体状の塊を指す言葉としては「welkin」や「sky」が一般的でしたが、次第に「cloud」がその役割を担うようになり、現代の形に定着しました。
また、雲にまつわる英語の慣用句には興味深いものが多くあります。例えば「on cloud nine(とても幸せな、有頂天で)」という表現があります。なぜ「9番目」なのかについては諸説ありますが、アメリカの気象局がかつて雲を分類する際に、最も高い位置にある積乱雲を「タイプ9」としていたことに由来するという説が有力です。空の最も高い場所にいるような気分、というニュアンスから最高の幸せを意味するようになりました。他にも「Every cloud has a silver lining(どんな雲も裏側は銀色に光っている)」ということわざは、どんなに悪い状況でも必ずどこかに希望の光があるという励ましの言葉として、日常会話から文学作品まで幅広く使われています。
さらに、雲の種類を表す学術的な英語名にも明確な法則があります。19世紀の気象学者ルーク・ハワードが考案した分類法では、すべてラテン語がベースになっています。例えば、刷毛(はけ)で掃いたような「巻雲」を指す「Cirrus」はラテン語で「巻き毛」、綿菓子のような積雲の「Cumulus」は「積み重なった塊」、空を覆う層雲の「Stratus」は「広げられた層」、そして雨雲を指す「Nimbus」は雨雲そのものを意味する言葉に由来しています。現在私たちが使う「入道雲(積乱雲)」を指す「Cumulonimbus」は、これらを組み合わせた言葉です。
このように、英語における雲は、太古の視覚的な印象から科学的な分類、さらには精神的な比喩に至るまで、非常に多層的で豊かな背景を持っています。次に空を見上げた時、浮かんでいる雲の形からこれらの単語を連想してみると、英語という言語の面白さがより身近に感じられるはずです。
