私たちが毎日何度も目にする「時計」。当たり前のように時を刻んでいますが、その言葉の由来や歴史、そして英語表現を紐解くと、人類がどのように「時間」と向き合ってきたのかが見えてきます。
まず、英語で時計を意味する「clock」の語源ですが、これはラテン語で「鐘」を意味する「clocca」に由来しています。中世ヨーロッパの初期の時計には、現在のような針と文字盤はなく、決まった時間に鐘を鳴らして人々に時を知らせる役割が主でした。つまり、時計とはもともと「目で見えるもの」ではなく、「耳で聞くもの」だったのです。一方で、持ち運びができる「watch」は、夜警や見張り番を意味する「watchman」が、交代の時間を確認するために携帯していたことに由来すると言われています。
私たちが使っている「AM」や「PM」という言葉にも、古代ローマの知恵が隠されています。AMはラテン語の「Ante Meridiem(太陽が子午線を越える前)」、PMは「Post Meridiem(太陽が子午線を越えた後)」の略称です。時計が普及するずっと前から、人々は太陽の動きを中心に生活を組み立てていたことが、現代のデジタル時計の中にも記号として生き続けています。
時計の文字盤をよく見ると、数字が「ローマ数字」で表記されているものがあります。ここで面白いのが「4」の表記です。通常では「IV」と書くのが一般的ですが、時計の世界では「IIII」という表記が主流となっています。これには諸説ありますが、フランスの王が「IV」よりも「IIII」の方がバランスが良いと命じたという説や、ローマ神話の主神ジュピター(IVPITER)の頭文字と重なるのを避けたという説など、歴史的なこだわりが反映されています。
英語の慣用句には、時間や時計を用いたユニークな表現が数多く存在します。例えば「Against the clock」というフレーズがあります。これは「時計に逆らって」ではなく、「刻一刻と迫る期限と戦いながら、大急ぎで」という意味で使われます。また、非常に正確であることを「As regular as clockwork(時計仕掛けのように規則正しい)」と表現するのも、機械式時計が人類にとっていかに精密で信頼のおける存在であったかを象徴しています。
意外なところでは、世界で最も高級な時計に使われる「トゥールビヨン」という機構があります。これはフランス語で「渦」を意味しますが、重力による誤差を打ち消すために内部機構を回転させる仕組みのことです。18世紀に発明されたこの超精密な技術は、現代でも職人の手によって受け継がれており、もはや計測器というよりも「腕の上の芸術品」として愛されています。
文法的な側面では、時間を尋ねる際の定番フレーズ「What time is it?」がありますが、より丁寧な表現として「Do you have the time?」という言い方があります。ここで定冠詞の「the」を忘れて「Do you have time?」と言ってしまうと、「(私と話す)時間はありますか?」という全く別の意味になってしまうため、注意が必要です。
このように、時計という小さな道具の中には、言語の変遷、王室のこだわり、そして科学の進化がぎっしりと詰まっています。次にふと時計を見たとき、そこにある数字や針の動きが、人類が紡いできた長い歴史の一部であると感じられるのではないでしょうか。
