夜空を横切る光の帯「天の川」。日本語では「川」と表現されますが、英語では「The Milky Way」と呼ばれます。この「ミルクの道」という独特な表現の裏には、古代ギリシャ神話や、現代の科学用語にまでつながる興味深い歴史が隠されています。
英語で天の川を指す「Milky Way」の由来は、古代ギリシャ神話に遡ります。女神ヘラが英雄ヘラクレスに母乳を与えていた際、こぼれ出した母乳が空に広がって筋になったという伝説から、「Milky(乳の)Way(道)」と呼ばれるようになりました。日本語の「川」という風流なイメージとは異なり、西洋では「流れたミルク」という非常に具体的な色彩イメージで捉えられていたことが分かります。
実は、私たちが日常的に使う「galaxy(銀河)」という単語も、このミルクの伝説と深い関わりがあります。この言葉は、ギリシャ語で「ミルク」を意味する「gala」に由来しています。つまり、英語圏の人々にとって銀河とは、その語源からして「ミルクのようなもの」という認識が根底にあるのです。
一方で、東アジアの影響を強く受けた地域では、これを「川」に見立てる文化が共通しています。英語で直訳的に「The Silver River(銀河)」や「The River of Heaven(天の川)」と説明されることもありますが、これらは主に日本や中国の文化(七夕伝説など)を紹介する文脈で使われる表現です。同じ星の集まりを見て、ある文化は「ミルク」を、別の文化は「川」を連想したというのは、非常に興味深い文化の違いですね。
また、世界には他にもユニークな呼び名があります。例えば、北欧の一部の地域では「Winter Street(冬の道)」、アフリカの一部の文化では「The Backbone of Night(夜の背骨)」と呼ばれることもあります。英語圏の文学や詩においても、天の川は単なる天体現象ではなく、天国への道や神秘的な境界線として描かれることが少なくありません。
文法的な特徴としては、特定の天体を指すため、常に定冠詞を伴って「the Milky Way」と表記し、固有名詞として大文字で書き始めます。また、私たちが住んでいるこの銀河系そのものを指す場合にもこの名称が使われます。
このように、英語の「The Milky Way」という言葉には、古代の神話から現代の天文学まで、長い時間の積み重ねが凝縮されています。七夕の季節に「天の川」を見上げる際、その向こう側に「ミルクの道」という全く別の物語があることを想像してみると、夜空がより一層広く感じられるのではないでしょうか。
