スポーツ観戦などでよく耳にする「引き分け」。英語では主に「draw」や「tie」が使われますが、なぜ2つの表現があるのか、その語源や使い分けを探ると、意外な歴史が見えてきます。
一般的に、アメリカ英語では「tie」、イギリス英語やサッカーなどの国際的なスポーツでは「draw」が好まれる傾向があります。「tie」の語源は「結ぶ(ネクタイのtie)」です。両者の得点が並び、結びついている状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
一方、「draw」の語源は、実は「引っ張る」ではなく「withdraw(撤回する・引き下がる)」に由来するという説が有力です。かつての賭け事や勝負事で、勝敗がつかなかった際に「賭け金を撤回した(引き戻した)」ことから、勝負なしの状態を「draw」と呼ぶようになったと言われています。日本語でも「(手を)引く」と言いますが、英語でも似た発想があるのは面白い共通点です。
競技によっては、さらに特殊な呼び方があります。例えばテニスの「deuce(デュース)」です。これはフランス語で数字の「2」を意味する「deux」が語源です。「勝つためにはあと2ポイント連取が必要である」という状況を示しています。また、チェスで決着がつかない状態(手詰まり)を「stalemate」と言いますが、これは転じてビジネスや政治の交渉が「膠着状態」に陥った際にも使われる重要な表現です。
日本人が勘違いしやすい言葉に「dead heat」があります。日本語で「デッドヒート」と言うと「激しい接戦」をイメージしますが、英語の本来の意味は「完全な同着(引き分け)」です。競馬などで鼻差すらなく、勝者が決められないレースを指します。「Dead(無効な)」+「Heat(レース)」という意味で、勝負にならなかった(無効試合)というのが元々のニュアンスなのです。
日常会話で「引き分けにしよう」と提案する時は、「Let’s call it a draw.」というフレーズが便利です。直訳すると「それを引き分けと呼ぼう」ですが、議論が平行線の時などに「この辺で終わりにしよう」と手打ちにする際によく使われます。
文法的には、試合の結果として伝える場合、「The game ended in a draw.(試合は引き分けに終わった)」のように表現します。「tie」を使う場合は「The teams tied.(両チームは同点だった)」と動詞として使うことも一般的です。
このように「引き分け」を表す言葉には、紐の結び目から賭け事の精算、フランス語の数字まで、様々な背景が隠されています。単なる「同点」という結果以上に、その状況に至るまでのドラマを感じさせる言葉たちです。
