日本で一般的に使われる「マンション」。英語でもそのまま「mansion」と言いたくなりますが、実は海外でこの言葉を使うと、とんでもない誤解を生んでしまう可能性があります。和製英語の代表格とも言えるこの言葉の裏には、文化や住宅事情の違いが隠されています。
英語の「mansion」は、プールや広大な庭が備わっているような「大豪邸」や「お屋敷」を指します。語源はラテン語の「mansio(とどまる場所、宿場)」に由来し、中世ヨーロッパにおいて領主が住む立派な館を指すようになりました。そのため、海外の友人に「私はマンションに住んでいます(I live in a mansion.)」と英語で伝えると、ハリウッドスターのような大富豪だと思われてしまうのです。
では、私たちが住む集合住宅は英語でどう表現するのでしょうか。これには国や所有形態によって明確な使い分けがあります。アメリカ英語では、賃貸の集合住宅を「apartment」と呼びます。一方、分譲マンションのように各部屋を個人が所有している物件は「condominium(コンドミニアム)」と呼ばれ、日常会話では短縮して「condo(コンド)」と表現されます。
イギリス英語に目を向けると、状況はまた異なります。イギリスでは賃貸・分譲を問わず、集合住宅の各住戸を「flat」と呼ぶのが一般的です。これは、住居空間が「平ら(flat)」に広がっている同じ階層に配置されているという建物の構造から生まれた言葉です。
そもそも、なぜ日本では集合住宅を「マンション」と呼ぶようになったのでしょうか。その歴史は昭和30年代に遡ります。当時の日本では「アパート」という言葉がすでに定着していましたが、木造で手狭なイメージがありました。そこで、鉄筋コンクリート造の近代的な高級集合住宅を売り出す際、不動産業者が高級感を演出するためのキャッチコピーとして「マンション」という言葉を使い始めたのがきっかけと言われています。
関連するユニークな住宅用語に「penthouse(ペントハウス)」があります。これは高層ビルの最上階にある特別で豪華な部屋を指します。もともとは建物の壁に付属する「小さなひさし」や「粗末な小屋」を意味する言葉でしたが、建築技術の発達とともに建物の頂点にある最もラグジュアリーな空間へと意味が劇的に進化しました。
文法的な使い方としては、「アパートに住む」と言う場合、「live in an apartment」のように、箱の中にいるイメージを持つ前置詞の「in」を使います。また、部屋を借りる場合は「rent an apartment」、購入する場合は「buy a condo」といった動詞の使い分けも重要です。
このように、私たちが日常的に使っている「マンション」という言葉は、海を渡ると全く違うスケールの建物を指してしまいます。言葉のルーツや国ごとの使い分けを知ることで、英語圏のリアルな生活感や文化の違いをより深く理解できるのではないでしょうか。
