日本のソウルフードである「おにぎり」。英語で表現する際、古くから使われてきた直訳的な表現から、近年そのまま通じるようになった言葉まで、その移り変わりには異文化理解の歴史が詰まっています。
おにぎりを英語で説明する際、最も一般的で分かりやすいのは「rice ball」です。しかし、英語圏の人々にとって「ball」は球体を意味するため、日本の定番である三角形のおにぎりを見ると「丸くないのになぜボール?」と不思議に思われることがよくありました。そのため、より正確に形状を伝えるために「triangular rice ball(三角形のお米の塊)」と表現されることもあります。
しかし近年では、寿司(sushi)やラーメン(ramen)と同じように、「onigiri」という日本語がそのまま通用する場面が世界中で増えています。日本食ブームやアニメ・漫画の普及によって、わざわざ英語に翻訳しなくても理解される固有の食文化として定着しつつあるのです。
ここで、海外のアニメファンに語り継がれている有名なローカライズ(翻訳)の雑学をご紹介しましょう。1990年代後半にアメリカでアニメ『ポケットモンスター』が英語吹き替えで放送された際、キャラクターがおにぎりを食べるシーンで、なんと「jelly-filled doughnut(ジャム入りのドーナツ)」と翻訳されました。当時のアメリカの子供たちには黒い海苔が巻かれたおにぎりが未知の食べ物だったため、親しみやすいお菓子に置き換えられたのです。今では笑い話として語られていますが、当時の異文化への配慮と苦労が伺える有名なエピソードです。
おにぎりの中身(具材)について説明する際によく使われるのが「filling」という単語です。「鮭入りのおにぎり」であれば「a rice ball with salmon filling」や、中に詰められている状態を強調して「stuffed with salmon」と表現します。また、周りに巻かれている海苔は「seaweed(海藻)」や、そのまま「nori」と呼ばれます。
文法的なポイントとして、「rice ball」は数えられる名詞(可算名詞)なので、2つ以上なら「two rice balls」と複数形になります。一方で「onigiri」を英語の文中で使う場合、英語風に「onigiris」と複数形の「s」をつける人もいれば、日本語のルールを尊重して「two onigiri」とする人もおり、外来語ならではの面白い揺らぎが見られます。
このように、英語における「おにぎり」の扱いは、単なる「米の塊」から、日本独自の文化を持った「Onigiri」へと見事に進化してきました。一つの単語の翻訳の歴史から、世界がどのように日本文化を受け入れてきたのかを感じ取ることができるのではないでしょうか。
