英語で「覚える」を表現する際、私たちはよく「remember」や「memorize」を使いますが、その使い分けや記憶にまつわる慣用句を紐解くと、英語圏の人々の面白い感覚が見えてきます。
まず、基本となる2つの単語の違いです。「memorize」は、英単語や演劇のセリフなどを「意識的に努力して暗記する」という行為を指します。一方、「remember」は、過去の出来事や知識が「自然と頭に思い浮かぶ」、あるいは「忘れずに記憶にとどめている」状態を表します。つまり、テストのために必死に「memorize」した公式を、本番の試験中に「remember」する、といった関係性になります。
面白いのは、「完璧に暗記する」ことを意味する「learn by heart」という表現です。直訳すると「心で学ぶ」となりますが、これは古代ギリシャなどで信じられていた「人間の記憶や知性は脳ではなく心臓(heart)にある」という古い考え方に由来しています。「頭」ではなく「心」に刻み込むという感覚が、現代の英語にもそのまま残っているのは非常に興味深いですね。
また、記憶を助ける「語呂合わせ」や「記憶術」のことは英語で「mnemonic(ニモニック)」と言います。少し難しい単語ですが、これはギリシャ神話に登場する記憶の女神「ムネモシュネ(Mnemosyne)」の名前が語源となっています。
日常会話でよく使われる、記憶にまつわるユニークなフレーズもあります。例えば、名前や出来事を聞いて「あ、それに聞き覚えがある(ピンとくる)」という時は「ring a bell」と言います。頭の中でチリンとベルが鳴る様子を想像すると分かりやすいでしょう。逆に「喉まで出かかっているのに思い出せない!」というもどかしい状態は、「on the tip of my tongue(舌の先に乗っている)」と物理的な感覚で表現されます。
文法的な注意点として、「remember」の後に続く形によって意味が大きく変わるルールがあります。「remember to do」は「(これから)〜することを覚えている(忘れずに〜する)」ですが、「remember doing」だと「(過去に)〜したことを覚えている」となります。日常会話でもテストでも頻出の重要なポイントです。
このように、英語における「記憶」や「覚え方」に関する表現は、古代の信仰から身体的な感覚まで、さまざまな要素が絡み合ってできています。英単語を覚える際も、こうした背景にあるストーリーと一緒に「learn by heart」することで、より深く記憶に定着するかもしれません。
