英語学習において欠かせない「語彙」。英語では一般的に「vocabulary」と表現されますが、この言葉の成り立ちや関連用語、そして英語という言語が持つ圧倒的な語彙の歴史に注目すると、とても興味深い事実が見えてきます。
まず、日本語では個々の言葉も全体のまとまりも「単語」や「語彙」と混同して使いがちですが、英語では明確な区別があります。一つ一つの言葉自体は「word」ですが、ある言語や個人が知っている「単語の全体集合」を指すのが「vocabulary」です。さらに専門的な文脈や言語学においては「lexicon」という言葉が使われ、本などの巻末にある特定分野の用語集は「glossary」と呼ばれて区別されます。
「vocabulary」という言葉の語源は、ラテン語で「呼ぶこと」や「名前」を意味する「vocabulum」に遡ります。同じ語源から派生した言葉には「vocal(声の)」や「voice(声)」があり、言葉というものが本来「声に出して誰かを呼ぶもの」であったというルーツを感じさせます。
雑学として、英語は世界で最も語彙数が多い言語の一つと言われています。その理由は複雑な歴史にあります。もともとのゲルマン系の古英語に加えて、11世紀のノルマン・コンクエスト(ノルマンディー公によるイングランド征服)によってフランス語が大量に流入しました。さらに、シェイクスピアが「swagger(威張って歩く)」や「assassination(暗殺)」など、数千もの新しい英単語を自ら作り出して語彙を爆発的に増やしたという逸話は、英語圏では広く知られています。
「言葉」にまつわるユニークな慣用句に「eat one’s words」という表現があります。直訳すると「自分の言葉を食べる」となりますが、実際には「前言を撤回する」「自分の間違いを認める」という意味で使われます。自分が一度吐き出した言葉を、後悔とともに再び飲み込む様子を想像すると、非常に視覚的でユーモラスな表現です。
日本人の英語学習者が間違えやすい文法的な注意点もあります。「今日は5つの語彙を覚えた」と言いたい時に「I learned 5 vocabularies.」とするのは不自然です。前述の通り「vocabulary」は集合体を表す言葉であるため、個数を数える際は「I learned 5 words.」や「5 vocabulary words」とするのが正しいルールです。
このように、英語の「語彙」には、単なる暗記対象にとどまらない深い歴史や文化が詰まっています。一つの単語の背後にあるストーリーを知ることで、語彙力を伸ばす(build one’s vocabulary)プロセスがより一層楽しくなるのではないでしょうか。
