「誰」を尋ねる疑問詞として、あるいは関係代名詞として、英語学習の初期で必ず習う「who」。非常にシンプルで身近な単語ですが、その裏には英語という言語の進化や、ネイティブならではの面白い感覚が隠されています。
英語の歴史の中で、現在進行形で最も大きな変化を遂げているのが「whom」の衰退です。本来、主格(~が)は「who」、目的格(~を・~に)は「whom」と使い分けるのが厳密な文法ルールです。しかし現代の日常会話では、「Who did you talk to?(誰と話したの?)」のように、目的格の場面であっても「who」を使うのが圧倒的に主流になっています。「whom」はフォーマルな文章やスピーチなどに追いやられつつあり、「who」は言語がより使いやすくシンプルに進化していることを示す生き証人と言えます。
また、「who」を使ったユニークな言葉に「who’s who(フーズ・フー)」があります。直訳すると「誰が誰か」ですが、これは「名士録」や「著名人辞典」を意味する名詞です。そこから転じて、「know who’s who」で「(その業界の)重要人物が誰か分かっている」「人脈に通じている」というスマートな表現として、ビジネスや社交の場で使われます。
日常会話で頻繁に登場する便利なフレーズに「Who knows?」があります。直訳は「誰が知っているだろうか?」ですが、実際には「いや、誰も知らない」「さあね、分からないな」という反語的な意味合いで使われます。「I don’t know.」よりも少し突き放したような、あるいは「未来のことは誰にも分からない」と肩をすくめるようなニュアンスを持つ表現です。
さらに、イギリス文化における「who」を語る上で、世界最長のSFテレビドラマ『Doctor Who(ドクター・フー)』は欠かせません。主人公の宇宙人が自分のことを「The Doctor」とだけ名乗るため、出会った人々が「Doctor who?(ドクターって、誰?)」と聞き返すのがお決まりの展開になっており、これがそのままタイトルとして定着しています。
このように、誰もが知る「who」という単語一つをとっても、文法ルールの移り変わりを体現していたり、文化的な背景を持つ慣用句を生み出したりと、生きた言語としての面白さが詰まっています。ただの疑問詞という枠を超えて、英語の奥深い世界を感じてみてください。
