英語のアルファベットの中で22番目に位置する「V」。日常的に見慣れた文字ですが、実は英語の歴史において非常にユニークな立ち位置にある文字であり、その成り立ちや使い方には意外な事実が隠されています。
まず驚くべきことに、古英語(昔の英語)の時代には「V」という文字そのものが広く使われていませんでした。現在私たちが使っている「V」から始まる英単語の多くは、フランス語やラテン語などから後になって借用されたものです。そのため、「victory(勝利)」「vital(生命の)」「value(価値)」など、どこか力強く、フォーマルな響きを持つ単語が多いのが特徴です。
文字の成り立ちも非常に興味深いものです。「V」はもともと「U」と全く同じ文字として扱われていました。古代ローマ時代、ラテン語を石碑に彫る際、丸みを帯びた「U」よりも、直線の組み合わせである「V」のほうがノミで彫りやすかったため、「V」の形が多用されました。その後、時代を下り印刷技術が発達するにつれて、子音を表す「V」と母音を表す「U」が徐々に区別されるようになったのです。ちなみに「W(ダブルユー)」も、この「V(かつてのU)」が二つ重なった形に由来しています。
英語のスペルにおけるルールにも面白い特徴があります。実は、ネイティブの英単語は基本的に「v」で終わることがありません。「have」「give」「love」など、発音上は /v/ の音で終わる単語でも、必ず最後にサイレント(発音しない)の「e」を添えるルールになっています。これは、手書きの時代に「u」や「n」など他の文字と見間違えないようにするための工夫だったと言われています。
「V」にまつわる文化的なシンボルといえば、人差し指と中指を立てる「Vサイン」が有名です。これは「Victory(勝利)」や「Peace(平和)」を意味しますが、イギリスやオーストラリアなどでは、手の甲を相手に向けてこれを行うと、非常に攻撃的で下品なジェスチャー(侮蔑の意味)となるため注意が必要です。
また、スポーツや裁判などで対決を表す「〜対〜」は、ラテン語の「versus」からきており、省略して「v.」や「vs.」と表記されます。
たった1文字の「V」ですが、石に刻まれた古代の歴史から、スペルの独特なルールまで、知れば知るほど面白い背景を持っています。普段何気なく書いているアルファベットにも、数千年の言語のドラマが詰まっているのですね。
