学校で最初に習う「I, my, me, mine」。その中の「me」は「私を・私に」という目的語としておなじみですが、ネイティブの日常会話に耳を傾けると、学校の文法ルールとは少し違う、より人間味あふれる使われ方がされています。
最も代表的なのが、「It’s me.(私です)」という表現です。ドアをノックされて「誰?」と聞かれた時や、電話口などでよく使われます。しかし、厳密な伝統的英文法では、be動詞の後は主格になるため「It is I.」が正解とされていました。現在でも「It is I.」は間違いではありませんが、日常で使うとまるでシェイクスピアの劇か貴族のように大げさで堅苦しく聞こえてしまいます。現代英語では、文法的な正しさよりも「me」という響きのカジュアルさが好まれ、完全に定着しています。
また、「誰がケーキを食べたの?」「私!」と単語一つで答える時も、「I!」ではなく「Me!」と言います。これはフランス語の「moi(私)」の用法に影響を受けたという説があり、文の中での役割から切り離された単独の状況では、無意識に「me」が選ばれるのが英語の面白い特徴です。
カジュアルな会話では、さらにルールが緩くなります。「Me and Tom went to the park.(私とトムは公園に行った)」というフレーズです。正しくは「Tom and I」ですが、くだけた日常会話では、主語であっても目的格の「me」を文の先頭に持ってくることが非常に頻繁に起こります。
「me」を使った日常的な決まり文句も便利です。例えば、ちょっとした失敗や勘違いをした時に「Silly me!(私ってばバカだ!/しまった!)」と言ったり、相手の悩みや愚痴に対して「You and me both.(私も同じ状況だよ/全く同感)」と強い共感を示したりする際によく使われます。
さらに、近年では「ありのままの自分」を強く表現する言葉として「This is me.」というフレーズが愛されています。大ヒットした映画の主題歌のタイトルにもなり、論理的な主語の「I」ではなく、等身大で飾らない「me」を使うことで、「他の誰でもない、これが私なんだ」という力強い自己肯定のメッセージになっています。
このように、「me」は単なる「I」の目的語にとどまらず、人々が最もリラックスした状態で自分自身を指し示す、とても体温を感じる単語です。最も身近な単語だからこそ、リアルな使い方を知ることで英語のコミュニケーションがぐっと自然になります。
