英語の単語を見ていると、「この料理の名前、なんでこんな言葉なの?」と不思議に思うことがあります。実は食べ物に関する英語には、歴史や文化の影響が色濃く残っています。
たとえば「beef(牛肉)」と「cow(牛)」を比べてみましょう。「cow」は動物そのものを指す英語由来の単語ですが、「beef」はフランス語から取り入れられた言葉です。ノルマン人がイングランドを支配した時代、台所で肉を調理していたのはフランス語を話す人々。彼らの言葉が料理名として残り、動物の呼び名と食卓に上がった時の呼び名が違う、というユニークな関係が生まれました。
同じように「pig(豚)」と「pork(豚肉)」、「sheep(羊)」と「mutton(羊肉)」もセットになっています。畜産を担う英語話者の言葉と、食べ物として定着したフランス語の言葉が共存しているんですね。
また、食文化の広がりとともに、英語には世界中から料理の名前が入ってきました。「chocolate」はスペイン語を経由して、もともとは中央アメリカの先住民の言葉。「coffee」はアラビア語、「sushi」はもちろん日本語です。英語は「食べ物の国際交流の記録帳」と言ってもいいかもしれません。
さらに面白いのは、料理名がそのまま動詞になってしまうことです。「to butter bread(パンにバターを塗る)」のように、食材がそのまま動作を表すケースは英語ならではの表現です。
食べ物の単語をたどると、英語がどれほど多くの文化と関わってきたかが見えてきます。次に「beef」や「coffee」という言葉を使うとき、ちょっとその歴史を思い出すと、味わいがより深くなるかもしれませんね。