英語で「道」を表現しようとすると、真っ先に「road」や「street」が思い浮かびますが、英語には「道」を表す言葉が驚くほどたくさんあります。それらを使い分ける基準や、語源に隠された歴史を紐解いてみましょう。
まず、最も一般的な「road」の語源は、意外にも「乗る」を意味する「ride」と同じルーツを持っています。もともとは「馬に乗って移動するための場所」を指していました。そのため、現代でも「road」は都市と都市を結ぶ長距離の「道路」というニュアンスが強く、車で移動するような広義の道を指すことが多いのが特徴です。
一方で「street」は、ラテン語で「舗装された道」を意味する「strata」に由来します。歴史的に見れば、古代ローマ軍が遠征のために石を敷き詰めて作った強固な道がその始まりです。現代の英語では、単なる移動路ではなく、両側に建物や歩道があり、人々が交流する「街路」を指す言葉として定着しています。
他にも、街を歩けば「Avenue(アベニュー)」や「Boulevard(ブルバード)」という表記を目にするでしょう。「Avenue」はフランス語の「到着する」という言葉が語源で、もともとは邸宅や記念碑へと続く「並木道」を指しました。「Boulevard」はオランダ語の「防壁(bulwark)」が語源で、かつて城壁を取り壊した跡地に作られた、中央分離帯があるような非常に幅の広い大通りを指します。
道にまつわる慣用句にも、西洋の歴史観が反映されています。有名な「All roads lead to Rome(すべての道はローマに通ず)」は、古代ローマ帝国の交通網がいかに発達していたかを象徴する言葉ですが、転じて「目的を達成するための手段は違っても、結論は一つになる」という意味で使われます。
日常会話でよく使われるフレーズには「Hit the road」があります。直訳すると「道を叩く」ですが、実際には「出発する」「旅に出る」という意味になります。足や車輪が地面を叩くようなイメージから生まれた、旅立ちを感じさせる爽やかな表現です。
また、少し変わった表現に「middle of the road(道の真ん中)」があります。これは「中道の」「穏健な」という意味です。極端な端っこ(過激な意見)に寄らず、道の真ん中を歩くことから、政治的な立場や音楽の好みなどが「一般的で無難である」ことを表す際に使われます。
このように、英語における「道」の表現は、それが「移動のための手段」なのか、あるいは「街の一部としての空間」なのかによって細かく区別されています。私たちが何気なく歩いている「道」も、英語の視点で見つめ直してみると、その成り立ちや歴史の厚みを感じることができるはずです。
