人生の途中で直面する「困難」。英語でこれを表現する単語は、その深刻さや立ち向かう姿勢によって多岐にわたります。最も一般的な「difficulty」から、前向きな響きを持つ「challenge」まで、言葉の裏側にある背景を探ってみましょう。
まず、日本語でもよく使われる「challenge(チャレンジ)」という言葉ですが、英語における本来のニュアンスは少し独特です。もともとの語源は、ラテン語の「虚偽の告発」を意味する言葉に由来し、中世では「決闘を申し込む」という意味で使われていました。現代では、単なる「困難な状況」というよりも、「自分の能力を試されるような、やりがいのある課題」というポジティブな響きが含まれます。そのため、ビジネスシーンなどで「問題があります」と言う代わりに「We have a challenge.」と言うと、解決すべき目標という前向きな姿勢を示すことができます。
一方で、より深刻で辛い困難を指す言葉に「ordeal(オーディール)」があります。これは単なる「難しさ」ではなく「厳しい試練」を意味します。その語源は、古代に行われていた「神判(Ordeal)」に遡ります。罪の有無を判定するために、熱せられた鉄を持たせたり、水に沈めたりして神の裁きを仰ぐという恐ろしい儀式でした。この歴史的な背景から、現代でも耐えがたいほどの苦難や過酷な体験を指す言葉として使われています。
困難な状況を表す慣用句には、当時の生活感が滲み出ているものが多くあります。例えば「Between a rock and a hard place」という表現があります。「岩と硬い場所の間に挟まれて」という直訳の通り、どちらを選んでも最悪の事態が待っている「板挟み」という状況を指します。
また、勇気を持って困難に立ち向かう際に使われる「Bite the bullet」というユニークな慣用句があります。直訳は「弾丸を噛む」ですが、これは「痛みに耐えて困難を乗り切る」という意味です。麻酔がなかった時代の戦場で、兵士たちが手術の痛みに耐えるために鉛の弾丸を口に噛まされたという、切実な歴史が由来となっています。
文法的な側面では、抽象的な「困難」を指す場合は不可算名詞(数えられない名詞)として「difficulty」を使いますが、具体的な「困った事柄」が複数ある場合には「difficulties」と複数形にします。例えば「資金面での困難」など、特定の障害を指すときに使い分けられます。
このように、英語で「困難」をどう表現するかは、その壁をどう捉え、どう乗り越えようとしているのかという心のありようと密接に関係しています。単語の背景にある歴史を知ることで、目の前の困難に対する向き合い方も、少し変わって見えるかもしれません。
