旅行や出張で欠かせない公共交通機関。英語では「public transport(主に英)」や「public transportation(主に米)」と呼ばれますが、乗り物の名称や利用時の表現には、イギリスとアメリカで驚くほど大きな違いがあります。
最も有名な違いの一つが「地下鉄」の呼び方です。アメリカでは「subway」と呼ぶのが一般的ですが、イギリス、特にロンドンでは「underground」、あるいは親しみを込めて「the Tube(土管)」と呼ばれます。ここで注意したいのが、ロンドンで「subway」と言うと、道路を横断するための「地下歩道」を指してしまう点です。駅を探して「Where is the subway?」と聞くと、単なる地下道に案内されてしまうかもしれません。
鉄道全般についても、アメリカでは「railroad」、イギリスでは「railway」と表現が分かれます。また、切符の買い方にも違いがあります。目的地まで行って戻ってくる「往復券」は、アメリカでは「round-trip ticket」と言いますが、イギリスではシンプルに「return ticket」と呼びます。これに対して片道券は、アメリカでは「one-way ticket」、イギリスでは「single ticket」となります。
バスに関する文化もユニークです。イギリス、特にロンドンの象徴といえば赤い二階建てバス「double-decker」ですが、アメリカの都市部では連結バスなどの合理的な車両が目立ちます。また、アメリカでは長距離バス(intercity bus)が広大な国土を結ぶ重要な足となっており、「Greyhound」のような民間会社の名前がそのまま長距離バスの代名詞として使われることもあります。
公共交通にまつわる有名なフレーズといえば、ロンドン地下鉄の「Mind the Gap(足元の隙間にご注意ください)」です。1960年代に導入されたこのアナウンスは、今やイギリス文化のアイコンとなり、Tシャツのロゴや土産物のデザインにも使われています。一方、ニューヨークの地下鉄では「Stand back from the closing doors(閉まるドアから離れてください)」という、より直接的で実用的なアナウンスが主流です。
さらに、交通手段に関連する「道」の呼び方にも英米の個性が現れます。歩道はアメリカで「sidewalk」、イギリスでは「pavement」と呼ばれます。イギリスで「sidewalk」と言っても通じますが、逆にアメリカで「pavement」と言うと、歩道ではなく「舗装された道路そのもの」を指すことが多いため、少し混乱を招くことがあります。
このように、公共交通にまつわる英語は、それぞれの国の歴史や都市構造と深く結びついています。単語の使い分けを知ることは、単なる語学の習得だけでなく、その土地の空気を理解する第一歩になるはずです。
