英語で「食事」を表現する際、最も一般的な単語は「meal」ですが、朝・昼・晩といった特定の食事の呼び方や、それらにまつわる慣用句、歴史的な背景を紐解くと、英語圏の食文化の変遷が鮮やかに浮かび上がってきます。
まず、一日の最初の食事である「breakfast(朝食)」の語源に注目してみましょう。これは「break(破る)」と「fast(断食)」が組み合わさった言葉です。中世ヨーロッパでは、夕食から翌朝までの間、何も食べない時間を「断食」と捉えていました。つまり、朝食とは「夜間の断食状態を打ち破るための最初の食事」という意味を持っています。
夕食を指す「dinner」と「supper」の使い分けにも興味深い歴史があります。現代では「dinner」が最も一般的ですが、もともとはフランス語に由来し、「その日一番のメインの食事」を指していました。そのため、18世紀頃までは正午ごろに食べられていたのです。一方で「supper」は、スープに浸したパンを指す「sop」が語源で、一日の終わりに食べる軽い軽食を指していました。生活リズムの変化とともに「dinner」が夜へと移り変わっていった過程は、産業革命以降の社会構造の変化を象徴しています。
食事にまつわる慣用句には、パンを主食としてきた文化が色濃く反映されています。例えば、画期的な新製品やアイデアを称賛する際に「The best thing since sliced bread(スライス済みのパン以来の最高のもの)」という表現を使います。これは、1920年代にパンを均一にスライスする機械が登場した際、主婦の家事負担が劇的に減り、社会に革命をもたらしたことに由来しています。
また、意外な表現として「eat humble pie」があります。これは「屈辱に耐える」「甘んじて謝罪する」という意味ですが、かつて「umbles(シカの臓物)」をパイにして身分の低い使用人が食べていたことから、自分を低く置くという意味に繋がったとされています。
文法的な特徴としては、食事を摂る際に「eat」よりも「have」が好んで使われる傾向があります。例えば「have lunch」と言う場合、単に食べ物を口に運ぶ(eat)という動作だけでなく、その食事の時間や体験、団らん全体を含めたニュアンスが含まれています。また、特定の食事を指す際は基本的に冠詞(a/the)を付けないというルールがありますが、形容詞が付く場合(例えば、a delicious lunch)は「a」が必要になるなど、細かいルールも存在します。
このように、英語の「食事」にまつわる言葉は、単なる栄養摂取の時間を超えて、中世の生活習慣や近代の技術革新、さらには階級社会の歴史までを物語っています。普段何気なく口にしている単語の裏側にある「おいしい雑学」を知ることで、英語学習がより味わい深いものになるはずです。
