日が沈み、一日の終わりが見えてくる時間帯に交わされる「こんばんは」。英語では「Good evening」が定番ですが、実は日本語の感覚で使うと思わぬ勘違いを生んでしまうこともあります。その使い方や語源、文化的な背景に注目してみましょう。
まず、最も注意したいのが「Good evening」と「Good night」の使い分けです。日本語の「こんばんは」は会った時の挨拶ですが、英語の「Good evening」も同様に「出会った時の挨拶」として使われます。一方で、日本語で「おやすみなさい」と訳される「Good night」は、別れ際の挨拶や寝る前の言葉です。夜に誰かと待ち合わせた際に、つい「Good night」と言ってしまうと、相手は「会ったばかりなのにもう帰るの?」と驚いてしまうかもしれません。
「evening」という言葉の語源を辿ると、古英語の「æfen」に行き着きます。これは「even(平らな、等しい)」という言葉と関わりがあり、昼と夜の境目が平らになる時間、つまり「夕暮れ時」を指していました。かつての人々にとって、夕方は一日がリセットされ、静寂が訪れる特別な境界線だったことが言葉の成り立ちから伺えます。
では、一体何時からが「evening」なのでしょうか。実は厳密な決まりはありませんが、一般的には午後6時頃から、あるいは日没後からを指すことが多いです。アメリカやイギリスでは、まだ外が明るい夏の午後5時過ぎに「Good evening」と言うのは少し違和感を持たれることもあり、その場合は「Good afternoon」や、よりカジュアルな「Hi」が好まれます。
また、イギリス英語では、親しい間柄で「Good」を省略して「Evening!」とだけ言うスタイルもよく耳にします。これは非常にフレンドリーで、かつどこか紳士的な響きを持つ挨拶です。反対に、フォーマルなパーティーや高級レストランの受付などでは、丁寧な「Good evening, sir / ma’am」という響きが、夜の落ち着いた大人の雰囲気を演出します。
ちょっとした雑学ですが、英語には「The evening of one’s life」という詩的な表現があります。これは「人生の晩年」を意味します。一日の終わりを告げる「evening」を人生になぞらえ、豊かに熟した時間を表現しているのですね。
文法的には「In the evening」のように前置詞の「in」を使いますが、特定の日の夜を指す場合は「On the evening of…」と「on」に変わるというルールもあります。これは「特定の日の枠組み」という意識が働くためです。
このように、英語の「こんばんは」には、昼と夜の境界線を大切にする文化や、出会いと別れを明確に分けるコミュニケーションのルールが反映されています。次に夜の街で英語の挨拶を交わすときは、その言葉が持つ「一日の締めくくりへの敬意」を感じてみてはいかがでしょうか。
