英語で「仕事」を表現する際、最も頻繁に使われるのは「work」や「job」ですが、これらの使い分けには英語特有の文法ルールや、社会的な背景が密接に関わっています。
まず知っておきたいのが、文法上の明確な違いです。「job」は数えられる名詞(可算名詞)で、具体的な職種や個別のタスクを指します。一方、「work」は原則として数えられない名詞(不可算名詞)であり、労働という行為そのものや、エネルギーを費やす活動全般を指します。例えば、「やるべき仕事がいくつかある」と言いたい時、具体的な作業を指すなら「I have some jobs to do」となりますが、漠然と「仕事がたくさんある」と言うなら「I have a lot of work」と表現するのが一般的です。
語源に目を向けると、さらに興味深い歴史が見えてきます。会社員がもらう「給料」を意味する「salary」は、ラテン語で「塩」を意味する「sal」が語源です。古代ローマの兵士たちが、当時貴重品だった塩を購入するための手当を支給されていたことに由来します。現代でも使われる「He is worth his salt(彼は給料に見合う価値がある=有能だ)」という表現にも、その名残が息づいています。
また、自分の仕事を「天職」と感じている場合、英語では「vocation」や「calling」という言葉が使われます。「vocation」はラテン語で「呼ぶ(vocare)」という言葉から来ており、もともとは「神に呼ばれて就く仕事」という宗教的なニュアンスを含んでいました。単に生計を立てるための「job」とは一線を画す、内面的な使命感の伴う仕事という響きがあります。
職業のスタイルを表す「white-collar(事務職)」や「blue-collar(現業職)」という表現も有名です。これは20世紀初頭のアメリカで、事務員が白い襟(collar)のシャツを着ていたのに対し、現場で働く人々が汚れの目立たない青い丈夫な生地の服を着用していたことに由来します。服装という外見的な特徴が、そのまま社会的な役割の呼称として定着した面白い例です。
文法的な使い方で迷いやすいのが前置詞の使い分けです。「work for」は会社や上司など「誰のために」働いているかを示し、「work at」は場所、「work as」は職種(例:work as a designer)を表します。これらの前置詞を使い分けることで、より明確に伝えることができます。
このように、英語の「仕事」に関する言葉には、文法的なルールだけでなく、古代ローマの習慣や近代の労働環境の変化が色濃く反映されています。何気なく使っている単語のルーツを知ることで、英語という言語の持つ社会的な広がりを感じることができるのではないでしょうか。
