日本の大学の英語表記では「学部」を「Faculty」と訳すのが一般的ですが(例:Faculty of Economics)、実は英語圏、特にアメリカでは異なる表現が使われることが多く、その使い分けには大学制度の歴史や文化の違いが反映されています。
まず、最も大きな違いはアメリカ英語とイギリス英語の間にあります。イギリスやその影響を受けた国々(カナダ、オーストラリア、そして日本の多くの大学)では、学部組織を指して「Faculty」を使います。しかし、アメリカでは「Faculty」と言うと「教員陣(教授たち)」という「人」を指すのが一般的です。アメリカの大学で「学部」を表す際は、「School」や「College」が使われます(例:Harvard Law School, College of Arts and Sciences)。
さらに細かい組織単位として「Department(学科)」があります。一般的に、大きな枠組みとしての学部(Faculty/School)の中に、特定の専門分野を扱う学科(Department)が存在するという階層構造になっています。「Department of History(史学科)」などがその例です。
「Faculty」という言葉の語源も興味深いものです。ラテン語の「facultas(能力、力)」に由来し、もともとは「何かをする能力」を意味していました。そこから転じて、「特定の学問を教える能力(権限)を持つ集団」を指すようになり、最終的にその組織自体を指す言葉として定着しました。今でも「mental faculties(知的能力)」のように、本来の意味で使われることがあります。
また、学部のトップである「学部長」は「Dean」と呼ばれますが、この言葉のルーツは古代ローマ軍にあります。ラテン語の「decanus」は「10人のリーダー」を意味し、かつては10人の修道士を監督する役職を指していました。それが大学組織に取り入れられ、現在の学部長という地位を表す言葉になったのです。
文法や表記のルールとして、特定の学部名を正式名称として書く場合は、単語の頭文字を大文字にします。「She belongs to the Department of Biology.」といった具合です。しかし、一般名詞として「どこかの学部」と言う場合は小文字(faculty/department)で表記します。
このように、英語の「学部」にまつわる表現は、単なる組織図の名称ではなく、能力への敬意や古代の組織論が息づいています。留学や国際交流の際、相手の国がどの言葉を使っているかに注目すると、その大学の背景が見えてくるかもしれません。
