夜空に赤く輝く惑星「火星」。英語では「Mars」と呼びますが、その名前の由来や派生語を探ると、古代の神話や「戦い」のイメージと深く結びついていることが分かります。
「Mars」という名前は、ローマ神話に登場する「戦いの神(Mars/マルス)」に由来します。夜空で不気味なほど赤く燃えるように見えるその姿が、血や戦火を連想させたことから名付けられました。この「赤」という特徴から、英語圏では「The Red Planet」という愛称でも親しまれています。
この「戦いの神」というルーツは、意外な英単語にも影響を与えています。例えば、柔道や空手などの格闘技を指す「martial arts」。ここに使われている「martial」は「Marsの」「戦争の」という意味を持つ形容詞です。また、非常時に軍隊が行政権を握る「martial law(戒厳令)」という言葉も、直訳すれば「戦いの神の法律」となり、その語源を共有しています。
SF作品などでおなじみの「Martian」は、「火星の」という形容詞であると同時に、「火星人」という意味の名詞としても使われます。かつてラジオドラマでパニックを引き起こした『宇宙戦争』などの影響もあり、Martianという言葉には、単なる隣の惑星の住人以上の、どこかミステリアスで恐ろしい響きが含まれることがあります。
また、男性を表す記号「♂」も火星と関係があります。これは戦いの神マルスが持つ「盾と槍」を図案化したものです。心理学のベストセラー本に『Men Are from Mars, Women Are from Venus(男は火星から、女は金星からやってきた)』というタイトルがあるように、英語圏では「男性的・好戦的」な性質の象徴として火星が引き合いに出されることもあります。
文法的なルールとして、惑星の名前は固有名詞であるため、文頭でなくても必ず頭文字を大文字にして「Mars」と表記します。「the Moon」や「the Sun」とは異なり、原則として定冠詞「the」を付けずに単独で使われるのが特徴です。
このように、「Mars」という単語を掘り下げると、単なる天体の名前を超えて、古代神話の世界やジェンダー観、さらには武道に通じる言葉のルーツが見えてきます。科学ニュースで火星探査の話題が出た際は、その勇ましい名前の由来を思い出してみると面白いかもしれません。
