英語の句読点の中で、日本人にとって最も馴染みが薄く、かつ使い方が難しいとされるのが「semicolon(セミコロン ;)」です。ピリオド(.)とカンマ(,)が合体したような形をしていますが、その役割もまさに「文を完全に切らずに、緩やかにつなぐ」という絶妙な立ち位置にあります。
基本的な使い方は、接続詞(andやbutなど)を使わずに、関係の深い2つの文章をつなぐことです。例えば、「I love cooking; it makes me relax.」のように使います。ここでピリオドを打つと文が分断され、カンマだけでは文法的に誤り(comma splice)となります。セミコロンは「前の文の内容が、次の文と密接に関連している」というニュアンスを視覚的に伝えるための、高度な接着剤のような役割を果たしているのです。
また、「スーパーカンマ」としての機能も見逃せません。都市名と国名など、要素自体にカンマが含まれるリストを列挙する場合、区切りが分からなくならないようにセミコロンを使います。「Tokyo, Japan; Paris, France; and London, UK」といった具合です。これにより、情報の塊を整理して伝えることができます。
歴史を紐解くと、セミコロンが現在の形で普及し始めたのは15世紀末のイタリアだと言われています。出版人のアルドゥス・マヌティウスが、より繊細なニュアンスを表現するために導入しました。しかし、その曖昧さゆえに、著名な作家たちの間でも評価は二分されています。特にアメリカの作家カート・ヴォネガットは「セミコロンを使うな。それは大学に行ったことを自慢する以外の何物でもない」という痛烈な皮肉を残したことで有名です。
一方で、現代社会においてセミコロンは別の形で愛されています。プログラミング言語では「命令の終わり」を示す重要な記号として不可欠であり、メールやSNSでは「😉」としてウィンクを表す顔文字の目としても活躍しています。
文法的には、セミコロンの直後は原則として小文字で始めます(固有名詞を除く)。ピリオドのように見えても、文はまだ続いているからです。
このように、セミコロンは「終わり」と「続き」の間にある余韻を楽しむ、非常に文学的かつ機能的な記号です。毛嫌いせずに使ってみると、英文に知的なリズムと奥行きを与えることができるかもしれません。
