今回は「アメリカで話されている言語ランキング」を紹介します。
アメリカで最も話されている言語は英語ですが、その他にも、350以上の言語が話されています。まさに多様性の国ですね。これらの言語は、土着の先住民言語から、アジア・アフリカ・ヨーロッパなど海外の移民によって持ち込まれた言語まで様々です。米国勢調査局によれば、アメリカ人の約22%は家庭内でもこれらの言語を話すそうです。
米国勢調査局では、「家庭で最もよく話されている言語」や「家庭で話される英語以外の言語」に関して定期的に調査しています。今回紹介するランキングは、2009年から2013年にかけて調査したもので、2017年に公表されました。
アメリカで話されている言語ランキング
順位 | 言語 | 話者数 |
---|---|---|
1 | 英語 | 2億3900万 |
2 | スペイン語 | 4100万 |
3 | 中国語 | 350万 |
4 | タガログ語 | 170万 |
5 | ベトナム語 | 150万 |
6 | アラビア語 | 120万 |
7 | フランス語 | 120万 |
8 | 韓国語 | 110万 |
9 | ロシア語 | 94万 |
10 | ドイツ語 | 92万 |
11 | ハイチ・クレオール語 | 87万 |
12 | ヒンディー語 | 86万 |
13 | ポルトガル語 | 79万 |
14 | イタリア語 | 58万 |
15 | ポーランド語 | 52万 |
16 | イディッシュ語 | 51万 |
17 | 日本語 | 46万 |
18 | ペルシャ語 | 42万 |
19 | グジャラート語 | 41万 |
20 | テルグ語 | 37万 |
21 | ベンガル語 | 32万 |
22 | タイ・カダイ語族 | 31万 |
23 | ウルドゥー語 | 30万 |
24 | ギリシャ語 | 27万 |
25 | パンジャーブ語 | 29万 |
26 | タミル語 | 27万 |
27 | アルメニア語 | 24万 |
28 | セルビア・クロアチア語 | 24万 |
29 | ヘブライ語 | 23万 |
30 | ミャオ語 | 22万 |
最も多く話されている言語は英語です。2.39億人に話されています。 2009年のアメリカの人口が約3.06億人(2022年は約3.31億人)なので、全体の78.2%にあたります。
2番目に多いのがスペイン語です。家庭内でスペイン語を話す人口は約4100万で、アメリカ全体の13.4%、アメリカ人の7人に1人はスペイン語母語話者という計算になります。スペイン語を話す人の多くは、ラテンアメリカにルーツを持つヒスパニック系の人たちです。2010年のヒスパニックの人口は約5000万人、2020年は約6000万人で、人口は年々増加傾向にあります。2050年にはアメリカ人の3分の1はヒスパニックになるとも推計されています。ヒスパニックが話すスペイン語混じりの英語はスパングリッシュとも呼ばれています。「アメリカにおけるスペイン語話者の現状と今後」について以下の記事でまとめています。
3~6位は、中国語 (350万, 1.1%)、タガログ語 (170万, 0.6%)、ベトナム語 (150万, 0.5%)、アラビア語 (120万, 0.4%)など、アジアの言語が続きます。
7以降以降は、ヨーロッパ言語や先住民言語など、合計350言語がランクインしています。これらの多くは全体の1%未満に過ぎませんが、多様な言語が話されています。現在の傾向が続けば、2050年には非ヒスパニック系の白人がマイノリティになるとも推測されています。
最も話されているのは英語ですが、アメリカ合衆国には公用語はありません。英語は事実上の公用語になっているだけです。州単位では英語を公用語にしているところもあり、現在、約30州が英語を公用語に規定しています。このような英語公用語化の流れは、外国語(主にスペイン語)の拡大が一因だと言われています。1980年代頃からは、イングリッシュ・オンリー・ムーブメント(English-only movement)も盛んになっています。英語の公用語化を望む人は、英語以外の言語話者の増加と共に、反動的に増加しているようです。保守系の世論調査では、70%以上のアメリカ人が英語の公用語化に賛成しているとも言われています。
「アメリカの分断」に関しては、アメリカの政治学者サミュエル・ハンチントンが1998年に予言した『文明の衝突』や、移民やヒスパニックをアメリカの危機と論じた『分断されるアメリカ』が参考になるかと思います。
これからも「言語」から見えるアメリカの行方に注目です。