英語を勉強していると、「a」とか「the」とか、冠詞に悩まされることがありますよね。日本語にはそもそも冠詞がないので、「りんご」と言うだけで「an apple」なのか「the apple」なのかを区別しなくても通じます。では、なぜ日本語には冠詞が存在しないのでしょうか。
ひとつの理由は、日本語が文脈依存の言語だからです。会話の中で「昨日、本を読んだ」と言えば、相手は状況から「その本」が特定のものなのか、ただの「ある本」なのかを判断します。日本語は助詞や語順によって文の役割を明確にしやすく、細かく区別しなくても意味が伝わる仕組みになっているんですね。
一方、英語は語順に強く依存する言語です。「I read book」と言うと、文法的に不完全で違和感があります。そこで「I read a book」「I read the book」と、冠詞で具体性を補う必要が生まれました。英語では「あるもの」か「そのもの」かを明示しないと、曖昧さが残ってしまうのです。
また、歴史的な背景も関わっています。古英語には「se」「seo」といった指示詞(「その」に近い言葉)がありました。これが変化して「the」になり、やがて文中で当たり前のように使われるようになりました。つまり冠詞は、昔の「指し示す言葉」が文法化したものなんですね。
日本語にも似た現象があります。「その本」とか「ある日」という言い方が、実は英語の冠詞に近い役割を果たしているのです。ただし日本語ではそれが必須ではなく、必要なときだけ登場する、という違いがあります。
だから、冠詞がある英語と、冠詞がなくても成り立つ日本語は、表現の仕方が違うだけで、どちらも理にかなった言語の形なんです。英語の「a」と「the」で迷ったら、「これは初登場? それとも相手も知っているもの?」と考えると、少しわかりやすくなるかもしれません。