英語で「ことわざ」は「proverb」と呼びますが、日常会話ではより親しみやすく「saying(言い回し)」と表現されることも多いです。昔から語り継がれるこれらの言葉には、英語圏の人々の生活の知恵や価値観、そして独特のユーモアが凝縮されています。
日本語のことわざと英語のことわざを比べると、表現は違えど「伝えたい教訓」が共通しているものが多く、人間心理の普遍性を感じさせます。例えば、日本語の「覆水盆に返らず」に相当する英語は「It is no use crying over spilt milk(こぼれたミルクを嘆いても無駄だ)」です。日本では「盆に載せた水」、西洋では「食卓のミルク」という生活習慣の違いが言葉に表れているのが面白いポイントです。
また、自然や動物をモチーフにしたものも豊富です。最も有名なものの一つに「The early bird catches the worm(早起きの鳥は虫を捕まえる)」があります。「早起きは三文の徳」に近い意味ですが、生存競争の厳しさを鳥と虫の関係で表しているのが特徴的です。また、「The grass is always greener on the other side of the fence(隣の芝生はいつも青い)」は、人間の持つ嫉妬心やないものねだりを、庭の景観に例えた非常に英語圏らしい表現と言えます。
歴史や文学に由来する言葉も少なくありません。例えば「All that glitters is not gold(輝くものすべてが金ではない)」という言葉は、見た目に惑わされてはいけないという教訓ですが、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』で使われたことで広く知られるようになりました。聖書や古典文学が英語のことわざの大きな源流となっていることがわかります。
一方で、少し変わった慣用句的な表現に「Break a leg(脚を折れ)」があります。これは舞台に立つ役者に対して「頑張れ」と励ます際に使われる言葉です。「幸運を祈る(Good luck)」と言うと逆に不幸が起きるという古い迷信から、あえて悪い言葉をかけることで幸運を呼び込もうとする逆説的な文化が生んだ表現です。
文法的な特徴として、ことわざは一つの完成した文として扱われるため、日常会話では「As the saying goes, …(ことわざにもある通り……)」という前置きを伴って引用されるのが一般的です。
このように、英語のことわざは単なる古い言葉の羅列ではなく、歴史や宗教、生活環境が複雑に絡み合って生まれた「言葉の結晶」です。これらを学ぶことは、英語という言語の背景にある深い文化や国民性を知るための、近道になるのではないでしょうか。
