日本語で「雑学」にあたる英語といえば、真っ先に思い浮かぶのが「trivia(トリビア)」でしょう。日本語でもおなじみの言葉ですが、その語源や使われ方を深掘りすると、西洋の教育史や文化的な価値観が見えてきます。
「trivia」の語源は、ラテン語で「3」を意味する「tri」と、「道」を意味する「via」が組み合わさった「trivium(トリウィウム)」という言葉にあります。直訳すると「三叉路(さんさろ)」、つまり3つの道が交わる場所を指します。古代ローマにおいて、三叉路は人々が集まり、世間話やとりとめのない噂話をする場所でした。そこから転じて、「どこにでもあるような、取るに足らないこと」という意味で使われるようになりました。
また、中世の大学におけるリベラル・アーツ(教養諸科)も関係しています。当時、教育の基礎となる3つの学問(文法・修辞学・論理学)を「Trivium」と呼び、より高度な4つの学問(算術・幾何・天文・音楽)を「Quadrivium」と呼びました。基礎的な3学問は「初歩的で誰でも知っているべきこと」と見なされたため、現代の「些細な知識」というニュアンスに繋がったという説もあります。
英語では、文脈によって「雑学」の呼び方が変わるのも面白い点です。単に「面白い事実」と言いたい場合は「fun facts」がよく使われます。また、金塊のように価値のある小さな情報という意味で「nuggets of information」と呼んだり、とりわけ脈絡のない情報の集まりを「miscellany(寄せ集め)」と表現したりすることもあります。
英語圏の文化として欠かせないのが「Pub Quiz(パブ・クイズ)」です。イギリスなどのパブでは、お酒を飲みながらチーム対抗で「trivia」を競い合うイベントが日常的に行われています。ここでは「trivia」は単なる「つまらないこと」ではなく、会話を盛り上げ、知的好奇心を満たすためのエンターテインメントとして愛されています。
文法的な特徴として、「trivia」はもともと「trivium」の複数形ですが、現代英語では不可算名詞(数えられない名詞)として扱われるのが一般的です。そのため、「a trivia」とは言わず、ひとつまみの知識という意味で「a piece of trivia」と数えるのが正しい形です。
このように、英語の「雑学」という言葉には、古代の街角の風景から中世の学問の体系まで、長い歴史が刻まれています。何気ない豆知識を「trivia」と呼ぶとき、その言葉の裏側には「人々が交差する場所で交わされた会話」という温かなルーツが隠されているのですね。
