英語で「書く」といえば「write」ですが、その語源や道具にまつわる言葉、そして「書くこと」に関連する慣用句を紐解くと、人類がどのように記録を残してきたかという歴史の息吹を感じることができます。
「write」の語源は、古英語の「writan」に遡ります。これはもともと「引っ掻く」「彫る」という意味でした。紙が普及するはるか昔、木や石にルーン文字などの記号を刻み込んでいた時代の名残が、この単語には隠されているのです。
現代では一口に「書く」と言っても、急いでメモをとる「jot down」、走り書きする「scribble」、文章の草組みをする「draft」など、状況に応じて多様な表現が使い分けられています。
書くための道具の語源も興味深いです。「pen(ペン)」はラテン語で「鳥の羽」を意味する「penna」が語源です。かつて羽ペンが主流だった歴史がそのまま言葉になっています。また、「pencil(鉛筆)」はラテン語の「pencillus(小さな尻尾、筆)」に由来し、もともとは動物の毛で作られた細い筆を指していました。
「書くこと」の力を示す有名なことわざに「The pen is mightier than the sword.(ペンは剣よりも強し)」があります。19世紀の劇作家エドワード・ブルワー=リットンが記した言葉で、言論や文章の持つ力が、武力よりも世の中を動かす影響力を持つことを表しています。
一方で、少し不吉な慣用句に「the writing on the wall」があります。これは「災難の予兆」という意味です。旧約聖書で王の宴会中に突如として謎の文字が壁に現れ、その後の帝国の滅亡を予言したというエピソードに由来しています。単なる文字が、時に運命を左右するメッセージとして捉えられてきたことが分かります。
文法的なポイントとしては、口約束ではなく「書面で、文書で」と正式に残すことを「in writing」と表現します。「Please put it in writing.(書面で提出してください)」のように、前置詞の「in」を使うことで、言葉が形を持った状態に留められているニュアンスを出します。
このように、英語の「ライティング」にまつわる言葉には、文字を石に刻んでいた古代から、羽ペンで思いを綴った時代、そして現代に至るまで、人類の知とコミュニケーションの歴史が詰まっています。次にペンを握る(あるいはキーボードを叩く)ときは、そんな言葉の奥深さを感じてみてはいかがでしょうか。
